Case76 採用内定の性質につき始期付き解約権留保付き労働契約とした最高裁判例・大日本印刷事件・最判昭54.7.20労判323.19【百選10版9】

(事案の概要)

 被告会社は、大学生であった原告に対して、採用内定通知書を送付し、原告に自己都合による内定辞退をしないこと及び内定取り消し事由が記載された誓約書を提出させました。しかしその後、会社は原告に対して、原告が「グルーミーな印象である。」などとして採用内定を取り消す旨の通知をしました。

 本件は、原告が会社に対して、労働者たる地位の確認及び未払賃金及び慰謝料の請求をした事案です。

 採用内定の法的性質が争点となりました。

(判決の要旨)

一審判決

 一審は、地位確認と賃金請求を認めました。

控訴審判決

 控訴審も、一審と同様地位確認と賃金請求を認めました。また、慰謝料100万も認めました。

上告審

 最高裁は、採用内定の制度の実態は多様で、採用内定の法的性質を一義的に議論することは困難であるとしながら、本件において、採用内定通知のほかに労働契約締結のための特段の意思表示をすることが予定されていなかったことから、会社からの募集(申込みの誘引)に対して原告が応募したのは、労働契約の申込みであり、これに対する会社からの採用内定通知は申込みに対する承諾であって、誓約書の提出とあいまって、これにより原告の就労の始期を大学卒業後とし、それまでの間、誓約書記載の内定取消事由に基づく解約権を留保した労働契約が成立したと解するとしました。

 そして、「グルーミーな印象である。」ことを理由とした内定取消しは、解約権留保の趣旨、目的に照らして社会通念上相当として是認することができず、解約権の濫用であるとして、会社の上告を棄却しました。

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