Case77 労働者の適性を判断するための期間は特段の事情のない限り試用期間であるとした最高裁判例・神戸弘陵学園事件・最判平2.6.5労判564.7【百選10版11】
(事案の概要)
原告労働者は、被告学校法人に、1年の期限付の常勤講師として採用されました。採用面接において、学校法人は、原告に対して、契約期間は一応1年とし、1年間の勤務状態から「再雇用」するか否かを判定すると説明し、契約成立後に締結された雇用契約書には期間満了時には当然退職の効果が生じること等が記載されていました。
1年後、学校法人が原告に対して、原告との労働契約は終了する旨通知したため、原告は雇用契約上の地位確認等を求めて提訴しました。
(判決の要旨)
一審・控訴審
一審及び控訴審は、本件雇用契約は期間満了により終了したとして原告の請求を棄却しました。
上告審
最高裁は、雇用契約に期間を設けた場合、その趣旨・目的が労働者の適性を評価・判断するためのものであるときは、期間の満了により雇用契約が当然に終了する旨の明確な合意が当事者間に成立しているなどの特段の事情が認められる場合を除き、右期間は契約の存続期間ではなく、試用期間であると解するのが相当であるとしました。
そのうえで、学校法人は採用面接において契約期間の1年を「一応」の物と述べ、「再雇用」の文言も期間の満了により契約が終了する趣旨とは断定しがたいとしました。また、雇用契約書の交付等が契約成立後であること、本件の学校が当時開校2年目で、生徒数が増加するなか職員を期限付で採用する必要は乏しいこと等から、雇用契約書は本件雇用契約の趣旨・内容を適切に表現しているか疑問があるとしました。さらに、原告は大学卒業の翌年に学校法人に採用されたているところ、このような場合には、長期間の安定した就職を望むのが一般的であるから、原告が1年後の雇用の継続を期待する事情もあるとしました。
以上より、最高裁は、上記「特段の事情」の有無等を検討させるため、本件を原審に差し戻しました。