Case78 就業規則のキャリアパス要件に基づく昇級請求権を認めた事案・社会福祉法人希望の丘事件・広島地判令3.11.30労判1257.5

(事案の概要)

 原告は、介護福祉士の資格を有し、被告法人の運営する社会福祉事業所で相談支援専門員として勤務していました。

 原告は、法人から「俸給表1級19号」とする辞令を受けていましたが、後に、就業規則の俸給表が「1級(キャリアパス要件)資格なし」「2級(キャリアパス要件)3年以上6年未満の実務経験かつ介護福祉士の資格を有するもの」に分類されており、キャリアパス要件に該当する場合には昇級させるとの定めがあることが明らかとなりました。

 本件は、原告が、自己がキャリアパス要件を満たしており、昇級の定めに基づき2級19号の給与を受ける権利があると主張し、主位的に差額賃金を、予備的に不法行為に基づく損害賠償を請求した事案です。

(判決の要旨)

 判決は、労働契約から当然に昇級請求権が生じるとはいえないものの、法人が原告に指示してきた職務内容やその存続期間、キャリアパス要件の内容に照らすと、法人は原告に対して俸給表2級相当の役割を担わせる者とし、これに見合う就労を求めていたことは明らかであるから、法人の裁量の有無にかかわらず、原告は法人に対して、個別具体的に昇格を求める権利を得たというべきであるとし、原告が俸給表2級19号に該当するものとして差額賃金の請求を認めました。

※確定

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