Case123 エリアマネージャーから店舗マネージャーへの配置転換及び部長1級から次長1級への降格は有効とされたが、賃金体系が明らかでないことから降格に伴う減給は無効とされた事案・スリムビューテイハウス事件・東京地判平20.2.29労判968.124

(事案の概要)

 原告労働者は、西日本担当のエリアマネージャー職で、職位は部長1級、年俸は1150万円でした。

 原告は、過去に店舗スタッフを強く叱ることがあり、それが顧客の耳にも届くなどした結果、顧客やスタッフから本部へクレームが寄せられることがありました。また、エリアマネージャー職として業務する中でも、スタッフへの不適切な言動等のクレームが本部に報告されていたため、会社は、原告に対してA店マネージャーへの配置転換を命じました。また、被告は原告に対して職位を部長1級から次長1級へ降格し、年俸を690万円に減額しました。

 その約1年後、会社は、A店からも部下の不満が苦情として寄せられているなどとして、原告に対してB社への出向を命じるとともに、職位をブロック長4級に降格し、年俸を490万円に減額しました。

 原告は、出向に応じず、従前から悪化していた貧血を理由に休暇を申し出ました。そうしたところ、会社は退職勧奨ののち原告を普通解雇しました。

 原告は、各降格減給及び解雇の無効を主張し、部長1級の地位にあることの確認や賃金及び慰謝料の支払いを求めました。

(判決の要旨)

⑴ A店マネージャーへの配転、次長1級への降格減給

 判決は、会社が原告に対してエリアマネージャーからA店マネージャーへ配置転換し、部長1級から次長1級へ降格したことはそれなりの必要性と合理性があるとして、降格処分は人事権の裁量の範囲内であり有効としました。

 もっとも、降格に伴う賃金減額は、それが客観的なもので、就業規則等を介して労働契約の内容となっている規定に従って減額後の賃金が算定されている限りにおいては一定の合理性があるものの、本件賃金減額については、会社の賃金体系の全体が明らかにされていないことなどから、減額の客観性・合理性が立証されておらず、減額幅も過大であることから、賃金減額は合理性がなく無効としました。

⑵ B社への出向、ブロック長4級への降格減給

 また、会社が原告をA店に配転させただけで、十分な指導・監督を行っていなかったことなどから、出向は別としても、さらなる降格・減給は合理性を欠き無効であるとしました。

⑶ 解雇

 判決は、解雇に先立って行われた降格・減給の有効性に疑問があることや、会社が、原告が体調を崩して休業している状況で退職勧奨を行い、これに応じないことから本件解雇を行っていることなどを指摘し、解雇はあまりにも性急にすぎるものであるとし無効とし、次長1級の地位にあることの確認及び賃金の支払いを認めました。慰謝料請求は棄却されました。

※控訴

Follow me!