Case136 配転と賃金は別個の問題であり、使用者には低額な賃金が相当な職種へ配転した場合でも賃金は従前のままとすべき契約上の義務があるとした事案・ デイエフアイ西友(ウェルセーブ)事件・東京地決平9.1.24労判719.87

(事案の概要)

 労働者が減額された賃金仮払いを求めた仮処分の事案です。

 本件労働者は、本件会社社長のスペシャル・アシスタントとして年額給与約784万円で雇用されていました。本件労働者は、会社と合意のうえ商品部に異動しましたが、勤務態度が悪いとして商品部のスタッフに降格され、年額給与約421万に減額されました。

(決定の要旨)

 会社は、経営者の裁量権の行使として賃金減額をすることができると主張しましたが、決定は、経営者の裁量権のみでは、一方的な賃金減額の法的根拠にはならないとしました。

 また、会社は、本件労働者の勤務成績不良のため、当初の契約内容とは異なる職種への配転を命じ、この配転に伴って、配転後の職種の他の従業員と同等の賃金額に減額したと主張しました。

 これに対して判決は、配転については使用者の裁量を認めましたが、配転と賃金とは別個の問題であって、法的には相互に関連しておらず、使用者は、より低額な賃金が相当であるような職種への配転を命じた場合であっても、特段の事情のない限り、賃金については従前のままとすべき契約上の義務を負っているとし、賃金減額を無効としました。

 もっとも、本件労働者が生活に窮迫しているとはいえないとして保全の必要性が否定され、本件労働者の申立ては却下されました。

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