Case139 課長経験者の受付業務への配転が、労働者の人格権を侵害し労働者を退職に追いやる意図でなされたものであり人事裁量を逸脱した不法行為に当たるとした事案・バンク・オブ・アメリカ・イリノイ事件・東京地判平7.12.4労判685.17

(事案の概要)

 被告銀行は、赤字基調にあったことから、新経営方針を徹底させるため、方針に積極的に協力する者を昇格させ、積極的でない原告労働者を含む多数の管理職を降格する人事を行いました。

 これに伴い、勤続33年でコマーシャル二課の課長であった原告は、オペレーションズテクニシャンに降格となり、数回の人事を経て総務課受付業務に配転されました。

 本件は、降格を含む一連の人事が原告を退職に追い込むための嫌がらせ人事であるとして、原告が不法行為に基づく慰謝料請求をした事案です。

(判決の要旨)

 判決は、使用者が有する異動、昇格、降格等の人事権の行使は、労働者の人格権を侵害する等の違法・不当な目的・態様をもってなされてはならないとしたうえ、原告に対する降格は人事権の濫用に当たらないとしました。

 もっとも、課長職まで経験した原告の総務課受付業務への配転は、いかに実力主義を重んじる外資系企業にあり、また経営環境が厳しいからといって是認されるものではなく、本件配転は原告の人格権(名誉)を侵害し、職場内外で孤立させ、勤労意欲を失わせ、やがて退職に追いやる意図をもってなされたものであり、裁量権の範囲を逸脱した違法なものであって不法行為を構成するとして、慰謝料100万円を認めました。

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