Case140 不活動仮眠時間であっても労働からの解放が保障されていない場合には労基法上の労働時間に当たるとした最高裁判例・大星ビル管理事件・最判平14.2.28労判822.5【百選10版36】

(事案の概要)

 原告労働者らは、ビル管理会社である被告会社の従業員として、ビル設備の運転操作・監視および整備、ビル内巡回監視等の業務に従事していました。

 原告らは、午前9時からの24時間勤務に就くことがあり、その際、2時間の休憩時間のほか、7~9時間の仮眠時間が与えられていましたが、仮眠時間中の外出は禁止され、仮眠室における在室、電話の接受、警報に対応した必要な措置を執ること等が義務付けられていました。仮眠時間は基本的に無給でしたが、突発的な業務が発生した場合には実作業時間に応じた時間外勤務手当が支払われていました。

 本件は、原告らが、実作業の有無にかかわらず、仮眠時間が労働時間に当たるとして残業代の支払いを求めた事案です。

(判決の要旨)

 判決は、不活動仮眠時間が労働時間に該当するか否かは、労働者が不活動仮眠時間において使用者の指揮命令下に置かれていたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるとしたうえ、不活動仮眠時間であっても労働からの解放が保障されていない場合には労基法上の労働時間に当たり、当該時間において労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価される場合には、労働からの解放が保障されているとはいえず、労働者は使用者の指揮命令下に置かれているとしました。

 そして、本件では、原告らは仮眠時間中、仮眠室における待機と警報や電話等に対して直ちに相当の対応をすることを義務付けられており、実作業への従事の必要が生じることが皆無に等しいなど実質的に対応が義務付けられていないと認めることができるような事情も存在しないことから、仮眠時間全体が労働時間に該当するとし、労基法上の割増賃金の支払いを認めました。

【プラスα】

1 変形労働時間制

 1か月単位の変形労働時間制を定めた労基法32条の2が適用されるためには、単位期間内の各週、各日の所定労働時間を就業規則等において特定する必要があるとしたうえで、労働協約又は就業規則において「業務の都合により4週間ないし1箇月を通じ、1週平均38時間の範囲内で就業させることがある」旨の定めだけでは直ちに変形労働時間制を適用する要件が具備されているものとはいえないとし、原判決を破棄し差し戻しました。

2 法定内残業代

 労基法上の労働時間であるからといって、当然に労働契約所定の賃金請求権が発生するものではなく、当該労働契約において仮眠時間に対していかなる賃金を支払うものと合意されているかによって定まるものである。

もっとも、労働契約の合理的解釈としては、労基法上の労働時間に該当すれば、通常は労働契約上の賃金支払の対象となる時間としているものと解するのが相当である。

 本件では、不活動仮眠時間に対しては泊まり勤務手当以外の賃金を支給しないものとされていたと解釈するのが相当であり、原告らは所定の時間外勤務手当等を請求することができない。

 ※労基法上の割増賃金の支払いのみ認めた

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