Case148 有期雇用契約締結前の訓練契約を含めると有期雇用契約が通算5年を超えているとして無期転換権の行使を認めた事案・ケイ・エル・エム・ローヤルダツチエアーラインズ事件・東京地判令4.1.17労判1261.19

(事案の概要)

 原告労働者ら3名は、オランダの航空会社である被告会社と訓練契約を締結し約2か月間客室乗務員としての訓練を受けた後、会社と3年間の有期雇用契約を締結し、その後2年間契約を更新しました。訓練期間中は訓練手当が支払われていました。

 仮に訓練契約が労働契約であった場合、2年間の契約更新により有期雇用契約が通算5年を超え>無期転換権が発生するため、原告らは会社に対して無期転換権の行使を申し込みましたが、会社は、訓練契約は労働契約ではないから無期転換権は発生しないと主張しました。

 本件は、原告らが会社に対して期間の定めのない労働契約上の地位の確認等を求めた事案です。

(判決の要旨)

 判決は、訓練契約が労働契約であったというためには、訓練期間において原告らが労契法上の労働者であったことが必要であり、そのためには①使用者の指揮監督下において労務の提供をする者であり、②労務に対する対償を支払われる者であったことが必要であるとしました。

 そのうえで、本件訓練の実態として①本件訓練を受講しなければ会社の客室乗務員として就労することは困難であること、②会社が訓練に先立ち原告らを客室乗務員として採用して社員番号や制服を付与していること、③訓練に引き続いて労働契約が締結され勤務が開始されていること、④一律に同内容の訓練が実施されていること、⑤訓練契約において、訓練修了後に会社との労働契約締結を拒否した場合に訓練費用相当額を賠償するとされていたことから、本件訓練は会社の客室乗務員を養成するための研修であったとしました。

 また、⑥訓練手当から所得税の源泉徴収を行っていたこと、⑦会社発行の証明書に客室乗務員としての稼働時期を訓練開始時と記載していたこと、⑧現在は労働契約締結後に同様の訓練を行っていることから、会社も訓練生を労働者と認識していたことを推認させるとしました。

 以上より、判決は、本件訓練への従事が労務の提供であるとしました。

 そして、原告らに訓練内容について諾否の自由がなく、時間的場所的に拘束されていたことなどから、訓練期間中の原告らは会社の指揮監督下にあり、訓練手当に労務対償性も認められるとして、訓練期間において原告らは労契法上の労働者であり、訓練契約は労働契約であったとし、期間の定めのない労働契約上の地位の確認を認めました。

※控訴

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