Case305 長年に渡る多数の非違行為が認められるものの懲戒免職を選択したことは裁量権の範囲を逸脱するとして懲戒免職処分が取り消され慰謝料も認められた事案・糸島市・市消防本部消防長事件・福岡地判令4.7.29労判1279.5

(事案の概要)

 懲戒免職処分を受けた原告労働者1の事件と、懲戒処分を受けた原告労働者2の事件が一緒に判断されていますが、原告労働者1の事件のみ紹介します。

 原告は、被告市消防本部予防課係長として、部下に対して多数のいじめ、しごきをしたとして懲戒免職処分(本件処分)を受けました。

 本件は、原告が、市に対して、本件処分の取消しと、国賠法に基づく慰謝料を求めた事案です。

(判決の要旨)

 判決は、地方公務員法所定の懲戒事由がある場合については、懲戒権者が、懲戒処分をするか否か、懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択するかを決定する裁量権を有しており、その判断が、社会通念上著しく妥当性を欠いて裁量権の範囲を逸脱し、またはこれを濫用したと認められる場合に違法となるとしました。

 この点、原告には長年に渡り多数の非違行為が認められるものの、指導等の度が過ぎた面もあることなどを踏まえると極めて悪質であったり、他の職員及び社会に与える影響が特に大きいとまではいえないとしました。そして、懲戒免職としたことは処分の選択が重きに失するものとして社会通念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を超えるものとして違法であるとし、本件処分を取り消しました。

 また、本件処分が匿名報道されたことなどから、違法な本件処分により相応の精神的苦痛を被ったとして慰謝料100万円が認められました。

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