Case325 開発センター廃止を理由とするセンター長に対する配転命令を無効とし配転命令拒否を理由とする賃金支払停止、減給処分及び解雇も無効とした事案・メガカリオン事件・東京地判令4.7.5

(事案の概要)

 原告労働者は、iPS細胞由来の血小板製剤の開発を目的とする被告会社が運営する本件センターのセンター長として業務を行っていました。

 会社は、平成30年1月、原告に対して、本件センターの廃止を理由に退職勧奨し、原告はこれを拒否しました。

 そうしたところ、会社は、原告に対して、主位的に退職合意の存在を主張し、予備的に原告を解雇する旨通知しましたが、原告が提起した前訴において、令和2年12月、原告の雇用契約上の地位を認める判決が確定しました。

 すると、会社は、令和3年2月、原告に対して、勤務場所を在宅勤務、業務内容をリサーチ業務とする本件配転命令をしました。

 原告は、令和3年3月、本件配転命令の無効等を主張して本件訴訟を提起し、会社は、同年5月以降の賃金の支払いを停止しました。

 また、会社は、配転命令拒否を理由に、原告に対して、令和3年6月に本件減給処分を、同年9月に本件解雇をしたため、令和3年5月以降の賃金停止、本件減給処分及び本件解雇の効力も争点となりました。

(判決の要旨)

 会社は、配置転換の必要性として、本件センターの廃止後、会社の研究部門では、原告の就労を前提としない組織運営が定着していると主張しました。

 判決は、本件センターで行われていた事業自体は継続され、原告が担っていた業務を各事業部門の部門長らに分掌させたにすぎず、原告の就労を前提としない組織運営が長期化したのは、会社が原告の退職を一方的に推し進めた結果、前訴判決により退職合意の存在及び解雇の効力が否定されたことによるものであり、当該事由は配置転換の必要性として正当なものとはいい難いとしました。

 また、リサーチアナリストの経験がない原告にリサーチ業務を行わせる合理性を認めることも困難であるなどとし、本件配転命令を権利の濫用として無効としました。

 そして、配転命令拒否を理由とする令和3年5月以降の賃金停止、本件減給処分及び本件解雇をいずれも無効としました。

Follow me!