Case324 使用者が労働者の兼業状況を容易に把握することができたとして兼業も合わせた長時間労働につき安全配慮義務違反を認めた事案・大器キャリアキャスティングほか1社事件・大阪高判令4.10.14労判1283.44

(事案の概要)

 原告労働者は、被告会社と有期雇用契約を締結し、A社が運営する24時間営業のガソリンスタンドで夜間営業の業務を行っていました。

 原告は、A社とも有期雇用契約を締結し、日中や日曜にも同じガソリンスタンで勤務するようになりました。

 被告会社は、原告がA社とも雇用契約を締結していることを知り、原告に対してA社の下での就労を辞めるよう求めていましたが、原告はA社の下での勤務日を増やしていました。

 その結果、原告の労働時間は、被告会社とA社を合計して月300時間前後となり、原告は精神疾患を発症し、被告会社の事業にかかる労災支給決定を受けました。

 本件は、原告が被告会社に対して、被告会社らに対して安全配慮義務違反に基づき損害賠償請求した事案です。

(判決の要旨)

 判決は、原告のA社での兼業は、勤務時間外の私的な時間を利用して雇用主と無関係の別企業で就労した場合(雇用主が兼業の状況を把握することは必ずしも容易ではない場合)とは異なることに照らし、被告会社は原告の就労状況も比較的容易に把握することができたとし、本業先である被告会社が原告の業務を軽減する措置をとるべき安全配慮義務を負っていたとしました。

 そして、被告会社は、原告に兼業の解消を求めることはあったものの、原告のA社における就労状況を具体的に把握することなく、長時間の連続勤務をする状態を解消しなかったとして、被告会社の安全配慮義務違反を認めました。

 また、判決は、被告会社は、被告会社における原告の勤務シフトを承認しない等の措置をとることもできたのであるから、原告の長時間労働が原告の積極的な選択の結果生じたものであることは安全配慮義務違反の有無の判断を直接左右するものではないが、過失相殺において考慮されるとして原告の過失を4割としました。

※確定

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