Case328 大学講師への10年特例の適用を否定して無期転換を認めた原判決を破棄した最高裁判例・学校法人羽衣学園(羽衣国際大学)事件・最一小判令6.10.31労判1322.5
(事案の概要)
原告労働者は、被告学校法人と雇用期間を3年間とする有期雇用契約(本件雇用契約)を締結し、法人が運営する大学において介護福祉士養成課程の授業を担当していました。
本件雇用契約は3年間更新されましたが(通算6年)、更新は1回限りとされていました。
原告は、契約期間が通算5年を超えたため、法人に対して無期転換の申込みをしましたが、法人は、大学教員任期法の10年特例に該当し、原告には無期転換権が発生していないと主張して原告を雇止めしました。
本件は、原告が法人に対して、無期転換を主張して雇用契約上の地位確認等を求めた事案です。原告が、10年特例が適用される大学教員任期法4条1項1号の教育研究の職に当たるかが争点となりました。
先端的、学際的又は総合的な教育研究であることその他の当該教育研究組織で行われる教育研究の分野又は方法の特性に鑑み、多様な人材の確保が特に求められる教育研究組織の職に就けるとき。
大学教員任期法第4条1項1号
1審判決(大阪地判令4.1.31労判1274.40)は10年特例の適用を認め原告の請求を棄却していました。
(判決の要旨)
控訴審判決・大阪高判令5.1.18労判1285.18
判決は、大学教員任期法4条1項1号の教育研究の職に当たるためには、当該教育研究組織で行われる教育研究の分野又は方法の特性にかんがみ、多様な人材の確保が特に求められる教育研究の職であることが必要である(流動型)としました。そして、そのような教育研究の職に該当すると評価すべきことが、例示されている「先端的、学際的又は総合的な教育研究であること」を示す事実と同様に、具体的事実によって根拠づけられていると客観的に判断し得ることを要するとしました。
そのうえで、本件講師職の募集経緯や職務内容に照らすと、実社会における経験を生かした実践的な教育研究等を推進するため、絶えず大学以外から人材を確保する必要があるなどということはできず、また、「研究」という側面は乏しく、多様な人材の確保が特に求められる教育研究の職に該当するとはいえないとして、10年特例に該当しないとして無期転換及び地位確認を認めました。
最高裁判決
最高裁は、任期法4条1項各号の趣旨について、大学等への多様な人材の受入れを図り、もって大学等における教育研究の進展に寄与するなどの任期法の目的(1条)を踏まえ、教員の任期又は雇用について任期制を採用するか否かや、任期制を採用する場合の具体的な内容及び運用につき、各大学等の実情を踏まえた判断を尊重する趣旨によるものと解するとし、この趣旨は、平成25年の法改正により労契法18条1項の特例として任期法7条が設けられた際にも改められず、上記の趣旨が変更されたものとも解されないとして、任期法4条1項1号所定の教育研究組織の職の意義について、殊更厳格に解するのは相当ではないとしました。
そして、本件においては、介護福祉士等の資格およびその実務経験を有する教員により授業等が実施され、実務経験をいかした実践的な教育研究が行われていたということができ、上記の教育研究を行うに当たっては、教員の流動性を高めるなどして最新の実務経験や知見を不断に採り入れることが望ましい面があり、このような教育研究の特性に鑑みると、上記の授業等を担当する教員が就く本件講師職は、多様な知識または経験を有する人材を確保することが特に求められる教育研究組織の職であるとして、本件講師職は、任期法4条1項1号所定の教育研究組織の職に当たるとしました。
※高裁に差戻し