Case328 介護福祉士養成課程の授業を担当する大学講師について10年特例の適用を否定して無期転換を認めた事案・学校法人羽衣学園(羽衣国際大学・地位確認)事件・大阪高判令5.1.18労判1285.18

(事案の概要)

 原告労働者は、被告学校法人と雇用期間を3年間とする有期雇用契約(本件雇用契約)を締結し、法人が運営する大学において介護福祉士養成課程の授業を担当していました。

 本件雇用契約は3年間更新されましたが(通算6年)、更新は1回限りとされていました。

 原告は、契約期間が通算5年を超えたため、法人に対して無期転換の申込みをしましたが、法人は、大学教員任期法の10年特例に該当し、原告には無期転換権が発生していないと主張して原告を雇止めしました。

 本件は、原告が法人に対して、無期転換を主張して雇用契約上の地位確認等を求めた事案です。原告が、10年特例が適用される大学教員任期法4条1項1号の教育研究の職に当たるかが争点となりました。

先端的、学際的又は総合的な教育研究であることその他の当該教育研究組織で行われる教育研究の分野又は方法の特性に鑑み、多様な人材の確保が特に求められる教育研究組織の職に就けるとき。

大学教員任期法第4条1項1号

 1審判決(大阪地判令4.1.31労判1274.40)は10年特例の適用を認め原告の請求を棄却していました。

(判決の要旨)

 判決は、大学教員任期法4条1項1号の教育研究の職に当たるためには、当該教育研究組織で行われる教育研究の分野又は方法の特性にかんがみ、多様な人材の確保が特に求められる教育研究の職であることが必要である(流動型)としました。そして、そのような教育研究の職に該当すると評価すべきことが、例示されている「先端的、学際的又は総合的な教育研究であること」を示す事実と同様に、具体的事実によって根拠づけられていると客観的に判断し得ることを要するとしました。

 そのうえで、本件講師職の募集経緯や職務内容に照らすと、実社会における経験を生かした実践的な教育研究等を推進するため、絶えず大学以外から人材を確保する必要があるなどということはできず、また、「研究」という側面は乏しく、多様な人材の確保が特に求められる教育研究の職に該当するとはいえないとして、10年特例に該当しないとして無期転換及び地位確認を認めました。

※上告

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