Case332 60歳を超えた有期雇用教員の年俸を20%減額する給与基準の改定が不合理なものとして無効とされた事案・学校法人宮崎学園事件・福岡高宮崎支判令3.12.8労判1284.78
(事案の概要)
原告労働者は、平成12年4月に被告法人と有期雇用契約を締結し、大学講師として長年勤務していました。
法人の給与基準では、60歳を超えて雇用された場合の年俸減額は定められていませんでしたが、法人は、平成27年に給与基準を改定し(本件改定)、60歳を超えて雇用された場合に年俸をそれまでの80%とする旨定めました。
これにより、約730万円だった原告の年俸は、平成28年4月から約150万円減額され、約580万円になりました。
本件は、原告が法人に対して年俸減額の無効を主張して差額賃金の支払いを求めた事案です。
(判決の要旨)
判決は、長年更新されてきた原告の雇用契約は、本件改定の前後を通じて、実質的には期限の定めのない雇用契約と同一であったとしました。
また、本件改定は、60歳を超える教員が支払いを受け得る年俸を減額するものであって、実質的には就業規則の不利益変更に当たるとしました。
そして、本件改定は、特定の有期雇用教員の年俸を大きく減額するものであるところ、それにより原告に生じる実質的な不利益が大きく、改定内容について原告が受ける不利益に見合うだけの相当性を有しているとは認められず、そのような不利益を原告に受忍させることがやむを得ない程度の高度の必要性に基づいたものともいえないから、労働契約法10条にいう合理的なものであるとは認められないとして、本件改定を無効としました。
※上告棄却により確定