Case348 特別の事情がない限り全教員を毎年度少なくとも1号俸ずつ定期昇給させる労使慣行があったとして差額賃金の請求が認められた事案・学校法人明泉学園事件・東京地判令元.12.12労経速2417.3
(事案の概要)
被告法人が運営する本件高校では、期間の定めのない専任教諭と、期間の定めのある常勤講師がいました。
原告労働者は、平成3年に法人と本件労働契約を締結し、国語科の常勤講師として勤務していましたが、平成30年に雇止めされました。
原告は、法人に対して、本件高校では常勤講師を数年後に専任教諭にすることが慣行となっていたと主張して、専任教諭として専任教諭賃金表の適用を受ける地位にあったことの確認等を求めましたが、地位確認は却下、専任教諭としての賃金請求は棄却されました。
また、本件高校では、平成10年度までは原則として原告を含む全教員が毎年度少なくとも1号俸ずつ昇給していましたが、原告は、平成11年度以降定期昇給していませんでした。
原告は、本件高校では常勤講師を含め基本給が定期昇給する労使慣行が存在するとして、差額賃金も請求していました。この点について取り上げます。
(判決の要旨)
判決は、実際に原則として全教員が毎年度少なくとも1号俸ずつ昇給していたことや、法人が作成した「定期昇給の運用基準(内規)」の内容などから、本件高校においては、勤務形態の変更、就業規則所定の昇給停止年齢への到達、病気等による長期欠勤その他の特別の事情がない限り、常勤講師を含む全教員を、毎年度少なくとも1号俸ずつ定期昇給させることが事実として慣行となっており、労使双方が、同慣行を規範として意識し、これに従ってきたとしました。
したがって、同慣行は、法的拘束力を有する労使慣行となっていたとして、原告が平成11年度以降毎年1号俸ずつ昇給していた場合との差額賃金の請求を認めました。
なお、平成11年度に給料表が低額に改正されていましたが、当該改正は就業規則の不利益変更に当たり無効とされました。