Case350 パチンコ店のホールスタッフが入社に当たり風俗店での勤務歴を申告しなかったことを理由とする懲戒解雇が無効とされた事案・岐阜地判平25.2.14ジュリスト1464.124

(事案の概要)

 原告労働者(女性)は、被告会社と有期雇用契約を締結してパチンコ店のホールスタッフのアルバイトとして勤務していました。

 原告は、過去に風俗店で勤務していたことを履歴書に書いていませんでした。会社は、後にその事実を知り、虚偽申告による入社及び店舗のイメージの毀損を理由に原告を懲戒解雇しました。

 原告が、懲戒解雇の無効を主張して申し立てた地位確認等の労働審判手続において、原告が審判に異議を申し立てたため、本件は訴訟に移行しました。

 なお、原告は本人で労働審判に対する異議申立てをしましたが、本来労働審判に対する異議申立ては審判の告知を受けた時(労働審判期日)から2週間以内にしなければなりませんが、担当書記官に問い合わせたところ、期日調書を受け取った時から2週間以内にすればよいと誤った回答を受け、これに従った結果異議申立て期間を徒過していました。

(判決の要旨)

1 懲戒解雇の有効性

 判決は、懲戒解雇事由の存在は認めつつ、原告が風俗店で勤務していた期間が約2か月半と短いこと、会社が解雇通知後1か月間原告をホールスタッフとして働かせ続けており客と接点のない職務に配置転換するなどの措置も執っていないこと、原告が有期のアルバイトにすぎなかったことなどから、企業秩序の侵害があったとしても軽微であったとしました。

 また、原告が自発的に職歴を申告すべき義務があったともいえないとしました。

 以上より、懲戒解雇は客観的合理的理由を欠き、社会通念上相当とも認められないとして無効としました。

 もっとも、懲戒解雇は無効としても期間満了による雇止めは有効とされました。

2 労働審判に対する異議申立ての適法性

 判決は、期間を徒過した訴訟行為の追完を定めた民事訴訟法97条1項の「当事者がその責めに帰することができない事由」とは、当事者が訴訟を追行する上で通常用いると期待される注意を尽くしても避けられないと認められるような事由をいうとしたうえ、原告が法律知識を有しない一般人であり、裁判所書記官の回答に従った結果期間を徒過したものであることから、異議申立ての追完を認めてこれを適法としました。

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