Case360 警察学校入学者に対して無断でHIV検査を行い陽性であったことを理由に辞職勧奨した行為がプライバシー侵害の違法行為であるとされた事案・東京都(警察学校・警察病院HIV検査)事件・東京地判平15.5.28労判852.11
(事案の概要)
原告労働者は、警視庁警察官採用試験に合格し、警察学校に入学手続きをして警察官に任用されました。その後、原告らは身体検査の一環として血液を採取されましたが、これがHIV検査であることは説明されませんでした。なお、当時から国は通達で採用時のHIV検査を禁止していました。
原告は、母親とともに警察学校の職員に呼び出され、検査結果が陽性であったこと、警察学校における厳しい訓練や警察官としての厳しい勤務がエイズの発症を早めるおそれがあるなどとして、入校辞退を勧告されました。原告は、同日入校辞退願を提出して警察官を辞職しました。
本件は、原告が東京都に対して、無断でHIV検査を行い辞職を強要した等の行為がプライバシー侵害の不法行為に当たるとして国家賠償を、検査を行った警察病院を運営する被告法人にも損害賠償を求めた事案です。
(判決の要旨)
判決は、本件HIV検査は、本人の同意なしに行われたというにとどまらず、その合理的必要性も認められず、原告のプライバシーを侵害する違法な行為であるとしました。
そして、警察学校の管理職が原告に対して警察官としての職務を継続することが不可能であるかのような不正確な情報を伝えて退職不可避の誘導をし、精神的に動揺している原告が冷静な判断ができない状態の下に退職を勧奨したものであり、違法な公権力の行使であるとしました。
東京都に慰謝料300万円、被告法人に慰謝料100万円の支払いをそれぞれ命じました。
※確定