Case369 就業規則に試用期間延長の規定がない場合、やむを得ない事情がない限り労働者の同意を得たとしても試用期間の延長は無効であるとした事案・明治機械事件・東京地判令2.9.28判時2493.103

(事案の概要)

 原告労働者は、被告会社と試用期間3か月の無期雇用契約を締結しました。雇用契約や就業規則に試用期間延長の定めはありませんでした。

 会社は、試用期間満了前に原告に対して、試用期間を1か月延長する旨の試用期間延長通知書を交付し、原告に同意の署名押印をさせました。

 また、会社は、同様に原告の試用期間を1か月毎に2回再延長し、それぞれ原告に同意の署名押印をさせました。

 なお、会社は試用期間延長の前後を通じて、原告に対して繰り返し退職勧奨し、会議室に配置して自習させ続けるなどしていました。

 会社は、3回目の試用期間延長の直後に能力不足を理由に原告を解雇しました。

 本件は、原告が会社に対して、試用期間延長及び解雇の無効を主張して、雇用契約上の地位の確認等を求めた事案です。また、原告は、退職勧奨が違法であるとして損害賠償も求めました。

(判決の要旨)

1 試用期間延長及び解雇の有効性

 判決は、就業規則に試用期間延長が定められていない場合であっても、職務能力や適格性について調査を尽くして解約権行使を検討すべき程度の問題があるとの判断に至ったものの労働者の利益のため更に調査を尽くして職務能力や適格性を見出すことができるかを見極める必要がある場合等のやむを得ない事情があると認められる場合に調査を尽くす目的から、労働者の同意を得た上で必要最小限度の期間を設定して試用期間を延長しても就業規則の最低基準効に反しないが、そうでない場合は労働者の同意を得たとしても就業規則の最低基準効に反し、延長は無効になるとしました。

 そして、上記のやむを得ない事情や調査を尽くす目的があったとはいえないとして、試用期間延長をいずれも無効とし、試用期間満了後の解雇を解雇権の濫用として無効としました。

2 退職勧奨の違法性

 判決は、会社が原告に精神的苦痛を与えて退職勧奨に応じさせる目的で会議室に一人配置して主に自習させ続けたこと、侮辱的な表現を用いて退職勧奨がなされたことから、退職勧奨を違法とし、慰謝料50万円を認めました。

Follow me!