Case393 小料理店を経営する個人が死亡しても板前との雇用契約が終了せず相続人が使用者の地位を承継するとされ廃業を理由とする解雇も無効とされた事案・小料理屋「尾婆伴」事件・大阪地決平1.10.25労判551.22

(事案の概要)

 本件労働者は、A個人が経営する小料理店で板前として勤務していました。

 Aが死亡し、Aの母であるBが小料理店にかかわる権利義務関係を相続承継しました。Aが入院・死亡した後も、本件労働者が店の経営を続けていました。

 Bは、Aの死亡により本件労働者の雇用契約は当然に終了したとして、また予備的に小料理店を廃業し本件労働者を解雇したとして、雇用契約の存在を否認しました。

 本件は、本件労働者がBに対して、雇用契約上の地位にあることを仮に定めることを求めた仮処分事件です。

(決定の要旨)

 判決は、雇用契約は、使用者がその固有の専門的技能を直接被用者に教えることを内容とするなど、その契約における使用者が具体的な特定の人物であることを要素とするものでない限り、使用者の死亡によって当然に終了するものではないとし、Bと本件労働者との間に雇用契約が存在するとしました。

 また、Aが入院・死亡した後も、本件労働者が店の営業を変わらず続けていたことなどから、予備的解雇を無効として本件労働者の申立てを認めました。

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