Case448 退勤途中に義父の家に立ち寄り介護を行った後、帰宅途中の交通事故について通勤災害と認めた事案・国・羽曳野労基署長(通勤災害)事件・大阪地判平18.4.12労判920.77

(事案の概要)

 通勤災害不支給決定に対する取消訴訟です。

 原告労働者は、勤務を終えて退勤する途中、交通事故により1級身体障害者の認定を受けている義父の介護のために通勤経路外にある義父の家に立ち寄り、約1時間40分後、介護を終えて徒歩で帰宅する途中、交差点で原付バイクと衝突し、頭蓋骨骨折、脳挫傷などの傷害を負い休業を余儀なくされました。

 原告は、労基署長に対して通勤災害の申請をしましたが、労基署長は通勤災害には当たらないとして不支給決定をしました。

 労働者が、前項各号に掲げる移動の経路を逸脱し、又は同項各号に掲げる移動を中断した場合においては、当該逸脱又は中断の間及びその後の同項各号に掲げる移動は、第一項第三号の通勤としない。ただし、当該逸脱又は中断が、日常生活上必要な行為であつて厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、当該逸脱又は中断の間を除き、この限りでない。

労災保険法第7条3項

(判決の要旨)

 判決は、原告が、退勤途中に妻や義兄が介護できない時間帯に身体障害者の義父の介護を行う行為は、当該原告の日常生活のための不可欠な行為であり、旧労災保険施行規則8条1号の「日用品の購入その他これに準ずる行為」に含まれるとして、原告がそのために合理的な通勤経路を逸脱した行為は、労災保険法7条3項但書の「日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるもの」を行うためにしたと認められるとしました。

 そして、本件事故は、原告が本来の合理的な通勤経路に復した後に生じたものと認められ、労災保険法7条1項2号の通勤の要件を満たすとし、不支給決定を取り消しました。

(コメント)

 なお、現在では労災保険法施行規則第8条5号に「要介護状態にある配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹並びに配偶者の父母の介護(継続的に又は反復して行われるものに限る。)」が追加されています。

※控訴

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