Case519 期間途中の解雇には雇用を終了せざるを得ない特段の事情を要するとして理事会と対立した校長に対する解雇が無効とされた事案・学校法人東奥義塾事件・仙台高秋田支判平24.1.25労判1046.22

(事案の概要)

 原告労働者は、被告法人と平成21年4月から4年間の有期労働契約を締結し、被告法人が運営するA高校の塾長(校長に相当)として勤務していました。

 しかし、原告は度々理事会や同窓会事業と対立し、理事会の決定により、平成22年3月に主に以下の理由で解職処分とされました。

 ①A高校内の清涼飲料水の自動販売機設置につき、清涼飲料水の危険性を指摘した張り紙を貼るなどし、また、張り紙のはがし方に抗議したBに対しても、配慮を欠いた言動をしたこと、②A高校の卒業祝賀会において不適切な発言をしたこと、③A高校の礼拝説教において不適切な発言をしたこと。

 本件は、原告が法人に対し、有期労働契約の期間途中の解雇が無効であると主張し、地位確認等を求めた事案です。

(判決の要旨)

 判決は、労契法17条1項が、解雇一般につき、客観的に合理的な理由及び社会通念上の相当性がない場合には解雇を無効とするとする同法16条の文言をあえて使用していないことなどからすると、同法17条1項にいうやむを得ない事由とは、客観的に合理的な理由及び社会通念上相当である事情に加えて、当該雇用を終了させざるを得ない特段の事情と解するのが相当であるとしました。

 そのうえで、原告は、卒業祝賀会や礼拝に際し、学校関係者への配慮を欠いた発言をしており、また、事業部が炭酸飲料の撤去に直ちに応じないのに対し、事業部の管理に係る自動販売機に無断で張り紙をするなど、やや乱暴で思慮を欠くというべき行動をとっており、校務をつかさどり、所属職員を監督する塾長としての見識が十分でない面があることは否定できないとしつつ、しかしながら、清涼飲料水の自動販売機などに張り紙を貼るなどした行為については、A高校の生徒の健康を図る目的があり、卒業祝賀会における発言については、父兄の労苦をねぎらうなどの意図でなされたものと認められ、極めて不適切とはいえず、礼拝における言動は、原告が、A高校から排除される懸念を抱いたことによりなされたものとも推測され、その後、実際に本件解職処分が行われたことも踏まえると、同様に極めて不適切とはいえず、そして、原告の塾長としての活動により、職員会議への職員の出席率が向上し、学生の態度に良好な変化があったと認められ、原告は、4年の任期の初年度において、すでに、塾長として一定の成果を出していたことに照らすと、原告が、塾長として、教職員らからの一定の信頼を得ていたと認められ、これに加え、原告には、そもそも管理職経験はおろか国内における一般的な教職経験もなかったものであり、理事長をはじめとする理事会がこれを承知であえて原告を塾長として採用したと認められるのであって、各理事、理事会においても、これを踏まえて、原告の経験不足の点を補完すべきであったと解されるところ、理事会がこれを全うしたとは認められないとし、以上の諸事情を勘案すると、本件解職処分には、労契法17条1項にいうやむを得ない事由があったとは認め難いとし、解雇を無効としました。

※確定

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