【解雇事件マニュアル】Q23期間途中の整理解雇はどのような場合に有効になるか

1 はじめに

 労契法17条1項の「やむを得ない事由」が認められるためには、①客観的合理性及び②社会的相当性(労契法16条)に加えて、期間満了を待たずに直ちに雇用を終了させざるを得ない特段の重大な事由が存在することが必要と解される。

 また、整理解雇の有効性は、①人員削減の必要性、②解雇回避努力、③人選の合理性、④手続の相当性の観点から厳しく判断され、期間途中の整理解雇もこれらの観点からより厳しく判断される。

 もっとも、期間途中の整理解雇の有効・無効は、事例判断によるほかないため、以下、期間途中の整理解雇が争われた裁判例を紹介する。

 期間途中の整理解雇を有効とした裁判例は見当たらず、使用者側の事情で期間満了を待たずに直ちに雇用を終了せざるを得ないような事由は容易には想定できないだろう。

2 人員削減の必要性を否定した例

⑴ プレミアライン(仮処分)事件・宇都宮地栃木支決平21.4.28労判982号5項

ア 概要

 同決定では、派遣元である使用者との間で有期派遣労働契約を締結し、平成20年10月1日に、期間を平成21年3月31日までとして契約を更新していた本件労働者に対して、派遣先との間の労働者派遣契約が解除されたとして平成20年12月26日付けでなされた解雇の有効性が問題となった。

 決定は、期間の定めのある労働契約は、「やむを得ない事由」がある場合に限り、期間内の解雇(解除)が許され(労働契約法17条1項、民法628条)、このことは、その労働契約が登録型を含む派遣労働契約であり、たとえ派遣先との間の労働者派遣契約が期間内に終了した場合であっても異なるところはなく、このことは、労働者派遣法の立法の際の昭和60年4月の第102回国会の衆議院社会労働委員会の審議における政府委員の答弁からも明確に裏付けられ、現在の監督官庁である厚生労働省の見解(同省労働基準局長・職業安定局長・平成20年12月10日発「労働者派遣契約の中途解除等への対応について」とも一致するものであるとした。

 また、この期間内解雇(解除)の有効性の要件は、期間の定めのない労働契約の解雇が権利の濫用として無効となる要件である「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」(労働契約法16条)よりも厳格なものであり、このことを逆にいえば、その無効の要件を充足するような期間内解除は、明らかに無効であるということができるとした。

 決定は、以下の各事情を総合すれば、本件解雇について、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」に該当することは自明であり、したがってまた、本件労働契約の期間途中の解雇(解除)について、「やむを得ない事由」があると解し得ないことは、明白であるとした。

イ 人員削減の必要性

 決定は、使用者の経営状況等は、相当に厳しいものと評価することができるとしつつ、しかしながら、他方、使用者の財務の状況について、①利益剰余金は、98億3504万1038円という多大の金額であり、②自己資産比率は、一般的に30パーセントを超えれば優良な会社と評価されるところ、約60.5パーセントであって健全であり、③流動比率は、一般的に200パーセント以上であることが理想的とされ、経済産業省によれば大企業で131.3パーセントであるところ、約243パーセントであって健全であり、④当座比率も、一般的には100パーセント以上が理想とされているところ、約123.6パーセントであって健在であることが一応認めることができるとした。

 そして、使用者が本件解雇の予告をした平成20年11月の時点で、派遣労働者全員に対し、希望退職の募集をしたならば、これに応じた派遣労働者が多数に及んだものと推認されるところ、上記認定に係る債務者の財務状況によれば、平成20年1月以降に、本件労働者1名ないし少数の残りの派遣労働者との間の派遣労働契約を期間内であるにもかかわらず敢えて解消し、同年1月から3月までの期間内に生ずる賃金の支出を削減する必要性は、およそ認め難いといわざるを得ないとした。

ウ 解雇回避努力

 決定は、使用者は、派遣先から平成20年11月中旬に労働者派遣契約を同年12月26日限り解除する通知を受けた後、本件労働者ら派遣労働者を解雇する以外の措置を何らとっていないとし、使用者が本件のように直ちに派遣労働者の解雇の予告に及ぶことなく、使用者において派遣労働者の削減を必要とする経営上の理由を真摯に派遣労働者に説明し、希望退職を募集ないし勧奨していれば、これに応じた派遣労働者が多数に及んだであろうことは、推認するに難くなく、そうすれば、本件労働者1名ないし残余の少数の派遣労働者の残期間内に生ずる賃金の支出を削減するために、期間内の解雇に敢えて及ぶことはなかったであろうと推測することができるとした。

 また、使用者は、本件労働者との間の派遣雇用契約書において「派遣労働者の責に帰すべき事由によらない本契約の中途解約に関しては、他の派遣先を斡旋する等により、本契約に係わる派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ることとする。」と約定し、この合意の内容を上記契約書に明記しており、かつ、本件解雇予告通知書においても、「弊社と致しましても、引き続き他の就業先の確保に努め、責任をもって職務を全うする所存でごさいますので、その節に付きましては、ご理解・ご協力の程、宜しくお願い申し上げます。」と記載し、これを口頭で告知し、本件労働者ら派遣労働者に対して、これを承諾する文言欄に署名押印することを求めていながら、平成10年11月の本件解雇の予告以降、本件労働者に対して、具体的な派遣先を斡旋するなど、就業機会の確保のための具体的な努力を全くしておらず、このことは、上記の解雇予告通知書の記載は、あたかも、専ら解雇手続を円滑に進めるための方便として記述していたものと受け止められかねないものであり、看過し難い態度であるというべきであるとした。また、決定は、監督官庁である厚生労働省が、同省労働基準局長・職業安定局長・平成20年12月10日「労働者派遣契約の中途解除等への対応について」を発して、派遣会社の事業所に対して、派遣労働者の新たな就業機会を確保するよう指導し、平成11年の労働省告示第137号(最終改訂・平成20年厚生労働省告示第37号)による「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」において、同じく、派遣元事業主に対して、派遣労働者に対する就業機会の確保を図るよう指導していることを指摘し、しかしながら、使用者は、単に、「紹介することのできる具体的な派遣先が無かった」とするだけで、他の派遣会社の派遣労働者に対する斡旋努力の事実も併せて考慮すれば、自らは、契約上の法的義務のほか、この労働基準行政上の指導にも違背し、また、派遣企業に求められている社会的な要請への対応も怠ったものと推認せざるを得ないとした。

エ 手続の相当性

 決定は、本件の解雇の手続をみると、使用者は、平成20年11月に自ら招集した会合の冒頭に書面と口頭で通知した解雇予告による解雇日である平成20年12月26日を契約終了の基準日としながらも、派遣労働者各人の有給休暇の残日数を使用した解雇の不利益軽減措置(「契約終了日の延長の取扱い」と「社宅利用の延長の措置」)を取っているものではあるが、一方では、使用者は、派遣労働者の解雇の必要性に関して、本件労働者ら派遣労働者に対して、派遣先との労働者派遣契約が終了することを一方的に告げるのみであって、使用者の経営状況等を理由とする人員削減の必要性の説明を全くしておらず、かえって、解雇告知の会合の状況によれば、使用者は、今回の解雇が当然のもので、所与の前提であるかのように各種書面を予め準備した上で、淡々と一方的に解雇の手続を進めたといわざるを得ず、その解雇手続は、相当なものということはできないとした。

 また、本件における解雇手続は、使用者が、後日、本件労働者ら派遣労働者から、使用者による解雇の効力を争われることのないよう、派遣労働者らによる任意の意思決定に基づく「合意解約」であるとの体裁を整えて、派遣労働契約を全て解消することを企図しながら、その意図を秘して、派遣労働者全員に退職届を作成するよう、逐一、指示して行われたものと認められるのであり、そのようにして退職届を徴収した使用者は、その目的のとおり、その後、この退職届の提出をもって有効な合意解約が成立しているとの主張を強行し、かつ、書面の通知による明白な解雇予告の存在すら否定しているのであって、この解雇の手続は、労使間に要求される信義則に著しく反し、明らかに不相当であるとし、使用者がそれまで雇用してきた労働者の地位を喪失させる解雇の手続を取るに当たり、現に使用者の指揮監督下にある労働者の信頼を利用し、かような策を弄することは、著しく正義・公平の理念に反するものとして、社会通念上、到底容認することができないとした。

⑵ ワークプライズ(仮処分)事件・福井地決平21.7.23労判984号88頁

 同決定も、派遣先の経営状態に起因する労働者派遣契約の中途解約をもって、直ちに使用者である派遣元が派遣労働者を解雇する「やむを得ない事由」があるとは認められないとした。

 また、派遣元は、会社存続の観点から已むに止まれず実施した解雇であると主張したが、派遣元の経営内容、役員報酬など、経営状態やその経営努力について何ら具体的な状況の疎明がないとして、解雇を無効とした。

⑶ アンフィニ(仮処分)事件・東京高決平21.12.21労判1000号24頁

ア 概要

 仮処分命令申立却下決定に対する抗告事件である同決定では、平成18年まで使用者と派遣労働契約を締結して資生堂に派遣されていたが、平成19年以降は使用者と資生堂との間の契約が請負契約となったため、使用者の契約社員として有期労働契約を更新してきた本件労働者ら5名についてされた整理解雇の有効性が問題となった。

イ 人員削減の必要性

 決定は、資生堂からの受注が平成21年5月から減量したというのみで、使用者の経営状態についての疎明資料はなく、かえって、使用者は同年2、3月頃には新規従業員3人を採用するなどしており、人員を削減する経営上の具体的必要性が明らかではないとした。

ウ 解雇回避努力

 決定は、使用者は、平成21年4月上旬に資生堂からの減量受注の通告を受けて、同月13日及び15日にはいずれも募集期間を両日から3日間とする希望退職の募集をしているが、募集期間が短期間であり、結局希望退職者がなかったとして、同月17日には、直ちに本件労働者ら5人を含む従業員22人に対して同年5月17日付けの解雇を通知しており、解雇の回避に向けた努力を尽くしたものとは認められないとした。

エ 人選の合理性

 決定は、使用者は、フルタイムで就労する者のうち、契約期間6か月以下の者及び平成20年1月から平成21年2月までの出勤率下位者から解雇対象者を選定するなどしており、解雇対象者の選定の際にかかる基準を設ける事自体は一定の合理性を有するとした。

オ 手続きの相当性

 決定は、事前に何ら従業員に対する説明がなく、使用者の主張する説明も解雇予告時に各従業員に整理解雇する旨伝えたのみであることからすると、使用者が行った解雇に「やむを得ない事由」があるとは到底認めることはできず、無効であるといわざるを得ないとした。

⑷ アウトソーシング事件・津地判平22.11.5労判1016号5頁〔確定〕

ア 概要

 同判決では、平成19年12月3日に派遣元である本件使用者との間で有期の登録型派遣労働契約を締結し、最終の雇用期間は平成21年3月31日までであった本件労働者に対して、新規派遣先を紹介するのが困難であるとして平成20年12月27日付けでなされた解雇の有効性が問題となった。

 判決は、登録型派遣労働契約の場合であっても、事業者間の派遣契約と、派遣労働者と派遣元との間の労働契約である派遣労働契約は別個の契約であり、派遣労働者と派遣元との間の派遣労働契約も労働契約の一形態であるから、その労働条件は、労働契約の内容によって定まることは明らかであり、解雇の場合も同様であるといえるとし、登録型派遣契約の解雇についても、一般の労働契約の場合と何ら異なるものではなく、当該労働者に関する派遣契約の終了が当然に派遣労働契約の終了事由となると解するべきではないとした。

 判決は、以下の事情を総合すると、本件使用者において、整理解雇の要件についてやむを得ない事由があると認められる程度にまで果たしたとはいえず、本件解雇は、やむを得ない事由があるとは認められないとした。

イ 人員削減の必要性

 本件使用者が本件労働者を解雇した平成20年12月当時、本件使用者の派遣先である製造業及び本件使用者を含む人材派遣業の業界全体が不況に見舞われ、本件使用者においても、本件労働者の派遣先であるシャープや他の派遣先との間の派遣契約を打ち切られるなど経営的に厳しい状況があったものの、他方で、本件解雇前後を通じて本件使用者の経営状態は健全であったと認められ、本件解雇は未だ余力を残した予防的措置と評価されるのであって、必要性の程度は、やむを得ずにしたというものとはいえないとした。

ウ 解雇回避努力

 本件使用者は、本件労働者を含む派遣労働者に対し、新規派遣先を確保することがほぼできなかったことから自主退職を勧めることを基本とし、シャープに派遣されていた17名のうち本件労働者を除く16名については自主退職に応じたが、自主退職に応じなかった本件労働者に対しては、もともと本件労働者の希望する条件とは合わなかった1社についてのみ新たな派遣先として打診したが、これが不調になるや新規派遣先の紹介を断念し、シャープとの間の派遣契約解除日と同日に解雇に踏み切ったのであり、解雇回避努力義務を尽くし切ったといえるかについては疑問が残るといわざるを得ない。

エ 人選の合理性

 本件労働者のように期間満了前の有期雇用労働者に対する自主退職や解雇を打診したことは認められるものの、他の労働契約の形態の従業員については特段解雇を打診した事実は窺われない。その上、期間の定めのない雇用契約の従業員と比べて期間の定めのある雇用契約の従業員を期間満了前に解雇すベき合理性についても、これを認めるに足りる事情や証拠はないといわざるを得ない。

オ 手続の相当性

 本件使用者は、新規派遣先を紹介したいけれども、紹介できるところはないなどと説明したのみで、本件労働者を解雇するに当たって、派遣労働者を削減する必要があるとする経営上の理由や解雇した後の処遇など十分説明し尽くしたとまではいえず、解雇手続について十分協議したなどの事情も認められない。

⑸ ジーエル(保全異議)事件・津地決平28.7.25労判1152号26頁

ア 概要

 仮処分決定に対する保全異議事件である同決定では、約5年から8年に渡って使用者との間の有期労働契約を数十回反復更新してきた本件労働者ら3名についてされた整理解雇の効力が争われた。

 決定は、以下のように述べたうえ、手続きの相当性について検討するまでもなく、本件解雇は合理的理由を欠き、社会通念上相当として是認することができず、本件解雇につき「やむを得ない事由」があると認めることはできないとした。

イ 人員削減の必要性

 決定は、人員削減の必要性という要素は、債務超過や赤字の累積など高度の経営上の困難から人員の削減が必要であり、企業の合理的な運営上やむを得ないものとされるときには、これが存在すると解されるとした。

 そして、E社は、D社から液晶パネルの生産業務を請け負い、使用者は、E社からさらに上記業務を請け負う関係にあるところ、平成27年3月、D社の業績悪化や工場閉鎖、減産の報道がなされ、同年4月3日には、E社から過去に例のない大幅な減産になる、同月20日より工場受入人数を60名規模で削減して欲しい旨の生産調整依頼を受けたこと、同年3月には、三重工場内の第1工場が閉鎖され、平成27年4月以降、E社における操業率は低下し、使用者の仕事量も減少していたこと、財務状況上も、使用者は貸借対照表上、累積赤字を計上していたこと、といった使用者の経営状態の悪化を示す事実が認められる一方で、E社は、本件解雇の約1か月前(平成27年6月30日)に行われた本件労働組合との団体交渉の席上、同社が使用者に支払っている請負代金は、操業減少後も従前の80%から90%を維持しており、当面、E社が使用者に支払う請負代金を減らす予定はないと述べていたこと、本件解雇後、解雇されなかった労働者の仕事量の動向を調べたところ、休日労働時間の増加などがみられたこと、使用者の関連会社であるジーアールが、本件解雇後も、亀山工場で勤務する労働者の新規募集をしていることや、財務状況上も、本件解雇がなされた第12期は、3608万6426円の経常利益を計上し、累積赤字も前期に比べ8344万6684円減少していたこと、といった人員削減の必要性に疑問を抱かせるような事実も一応認められ、また、使用者は貸借対照表上、累積赤字を計上していたこと、第9期には1億7952万5382円、第10期には2億1274万5894円の経常損失があったことが認められる一方で、第11期には経常損失が2930万4237円に減少し、本件解雇がなされた第12期には、3608万6426円の経常利益を計上しており、累積赤字も前期に比べ8344万6684円減少していたことが認められ、使用者の経営状態が持ち直しているかのようにもみえるとした。

 決定は、これらのことを考慮すると、本件解雇の目的は、E社の要望を受け使用者の経営合理化のために人員を削減することにあったと認められ、高度の経営上の困難を原因とする人員削減の必要性は抽象的なものに止まるというべきであり、したがって、本件労働者らを解雇しなければならないほどの人員削減の必要性を認めることはできないとした。

ウ 解雇回避努力

 決定は、使用者は解雇回避努力の一環として、希望退職者を募集したことを挙げるが、希望退職の条件は30万円の慰労金にとどまり、非正規雇用とはいえ、長期間にわたり反復継続して就労してきたであろう従業員らに対し、希望退職を募る退職条件として十分なものとは言えないとした。

 さらに、使用者は、これまで、三重工場で操業率の低下があったときには、亀山工場に配転・出向させることで対処していたところ、本件解雇後も、亀山工場では労働者の新規募集がなされているというのであって、本件労働者らを解雇するのではなく、亀山工場に配転・出向させることで、本件解雇を回避することが可能であったものと認められるとした。

 決定は、以上によれば、使用者が解雇回避努力を尽くしたとはいえず、解雇回避措置の相当性は認められないとした。

エ 人選の合理性

 決定は、使用者は、人選の基準について、各希望退職者募集要項に「整理解雇を行う場合の人選基準については、概ね訓戒等の制裁の有無、年齢、勤務成績(業務態度)等を重視して行う予定ですが、基準の詳細は、整理解雇の必要性が生じた際、事前に通知します」と明確に説明している旨主張するが、同募集要項の記載は、人選の基準としては具体性を欠いている上、労働者に対し、同募集要項に記載されている「基準の詳細」が通知されたことの疎明もなく、したがって、募集要項の配布により、本件解雇前に人選基準を事前に設定したとか、労働者に対し、人選の基準を事前に説明したと認めることはできないとした。

 また、使用者が本件解雇の際に参照したという人事評価表には、「会社への協力姿勢」、「勤務態度」、「指示に従えない」といった評価者の主観が入りやすい評価項目があり、これが全評点(30点満点)中の半分(15点)もの割合を占めているところ、人事評価表は「D社のニュースを受け、人員削減を行う必要性が生じたために作成した」ものであり、評価の公平性を担保するものは見当たらないとし、このような人事評価に基づいてなされた整理解雇に、人選の合理性を認めることは困難であるとした。

 決定は、以上によれば、人選の合理性も認められないとした。

3 解雇回避努力を否定した例

⑴ 資生堂ほか1社事件・横浜地判平26.7.10労判1103号23頁

ア 概要

 同判決では、使用者と平成21年1月1日から同年12月31日までの1年間の有期労働契約を締結していた労働者ら5名について、雇用期間を同年4月1日から同年5月31日までに短縮する合意をしたうえ、使用者が「事業の縮小その他会社のやむを得ない事由がある場合で、かつ、他の職務に転換させることもできないとき」に該当することを理由に労働者を同年5月17日付けで解雇した。

 判決は、以下のとおり人員削減の必要性は認められるものの、その程度は高度なものとまではいえず、使用者において解雇回避努力義務を尽くしたということはできず、手続の妥当性も欠いていたというべきであり、これらの事情を総合すると、本件解雇につき、「やむを得ない事由」(労働契約法17条)があると認めることはできないとした。

イ 人員削減の必要性

 判決は、使用者は、平成20年9月に発生したリーマンショックの影響により同年10月に売上高が大幅に減少し、その後も売上高の減少傾向が続き、平成21年1月から4月までの売上高は平成20年9月以前の水準を下回っていたこと、リーマンショックの後も、鎌倉工場においては、使用者がA社に対する営業活動を行った結果、平成21年2月ないし3月頃はA社から同年5月以降の受注量が増加するとの見込みを得ていたことから人員を補充していたこと、ところが、平成21年4月8日にA社から、当初の予想に反して、同年5月の発注量を半減させること及び少なくとも同年夏頃までは発注量が回復する見込みはない旨を伝えられたこと、A社は使用者の最大の取引先であり約11.7パーセントの売上げを占めていたこと、実際に、鎌倉工場における使用者の同年4月のライン数は5本、1日当たりの工数は42であったのが、A社からの受注減により同年5月のライン数は2本、1日当たりの工数は26にまで減少したこと、が認められるとした。

 そして、これらの事実によれば、A社からの受注が半減する同年5月には、鎌倉工場に勤務していた使用者の従業員64名のうち少なくとも使用者が算出した22名の余剰人員が発生する状態にあったと認めることができ、使用者において労働者らの解雇を決定した同年4月の時点において、人員削減の必要性が生じていたことが認められるとした。

 もっとも、本件解雇が行われる直前の使用者の平成20年11月から平成21年4月までの経常利益は約4150万円であったこと、同期間の当座比率は全国平均の約1.3倍である178パーセントであり、平成21年の平均流動比率は全国平均(162パーセント)を上回る190パーセントであったこと、第8期(平成20年11月1日から平成21年10月31日まで)の内部留保金は6733万円であったこと、が認められ、これらの事実によれば、使用者が平成21年4月の時点で、経営危機に陥り、早急に人員を削減しないと会社全体の経営が破綻しかねないような危機的な状況にあったということはできず、同時点において人員削減の必要性の程度が高度であったとまではいえないとした。

ウ 解雇回避努力

 判決は、使用者においては、A社から平成21年4月8日に正式な減産通告を受けた後、翌9日にはQが労働基準監督署に行き、退職者募集の際の上積み条件の要否、整理解雇の場合の人選基準、解雇の場合のスケジュールについて相談していること、契約期間として定められていた同年12月31日よりも前に雇止めをすることを可能にする意図の下に、翌10日に労働者らに対し契約期間を同年4月1日から5月31日までの2か月間に短縮することを提案し本件契約期間短縮の合意をしたこと、同合意をするに当たり、労働者らに対し、5月31日以降に更新されない可能性があることについて明確に説明をしなかったこと、同年4月13日に労働者ら従業員に対し、書面で応募期間を同月15日までの3日間とする22名の希望退職者の募集を行い、引き続き同月15日にも応募期間を同月17日までの3日間とする希望退職者の募集を行ったこと、希望退職の募集について退職条件として金銭的な上積みの条件等は一切示さなかったこと、上記の期間中に希望退職の募集に応じた者が一人もいなかったこと、同月17日に労働者らに対し、本件解雇の通知をしたことが認められ、上記の事実によれば、使用者は、A社から発注量の減少の通告を受けた直後から整理解雇ないし雇止めを念頭に置いて行動していたことは明らかであり、労働者らに十分な説明もないまま本件契約期間短縮の合意をさせている上、希望退職の募集も、上積みの退職条件を示さない短期間のものであって実効性に疑問があるものと言わざるを得ず、しかも、発注量の減少の通告を受けてから10日間に満たない短期間のうちに解雇通知に至っているとした。

 そして、このような本件解雇に至る経過に照らすと、使用者が本件解雇を回避するための努力義務を尽くしたということはできないとした。また、使用者は、ワークシェアリングを検討したり、中小企業安定助成金の申請を試みたりしたことは認められるものの、すぐに断念しており、これらの方策がどの程度真摯に検討されたのかは疑問であると言わざるを得ないから、これらの検討をしたことをもって解雇回避努力義務を尽くしたということはできないとした。

エ 人選の合理性

 判決は、使用者は、本件解雇の対象となる者の人選の基準として、技術に劣る者と欠勤が多い者を対象とすることにしたこと、具体的には、扶養内勤務者を除くフルタイマーの期間従業員のうち、まず勤続6か月以下の者を対象にし、次に出勤率(有給休暇も出勤日数に含め平成20年1月から平成21年2月までを対象に計算)が下位の者を対象としたこと、その結果労働者らが計算の結果、出勤率が下位であったため対象となったことが認められ、上記基準は、主観の入る余地がないという意味において客観的で合理的な整理基準ということができるとし、人選の合理性は認められるとした。

オ 手続の相当性

 判決は、使用者は、本件解雇時において、労働者らに対し、平成21年5月以降のA社からの受注量の減少及び鎌倉工場での使用者の人員削減の必要性が解雇理由であること、解雇者の人選基準、他事業所へのあっせん及び失業給付金の受取方法等について、1人について15分程度の時間を設け説明を行ったことが認められ、労働者らに対し、解雇理由及び人選基準等について一応の説明をしたことが認められるものの、事前に労働者らに対する説明や協議をしておらず、本件解雇に先立つ本件契約期間短縮の合意の際にも使用者が労働者らに対し十分な説明を尽くしていたとはいえないなど、本件解雇について十分に説明・協議をしたとはいえず、また、使用者が労働者らに示した他の就職先は、遠方であったり、そもそも募集期限を徒過していたりしており、使用者が労働者らの再就職支援を十分に行ったとはいえないとし、本件解雇は、手続の妥当性を欠くものであるとした。

⑵ 学校法人奈良学園事件・奈良地判令2.7.21労判1231号56頁

 同判決では、使用者と雇用期間を平成25年4月1日から平成30年3月31日として使用者の設置する大学のビジネス学部教授として勤務していた本件労働者について、ビジネス学部の廃止を理由に平成29年3月21日付けで解雇がなされた。

 判決は、仮に労働者と使用者との間の労働契約において職種限定の合意があったとしても、そのことから直ちにいわゆる整理解雇法理の適用が排除されることになるものではないとしたうえ、無期雇用の教授らに対する整理解雇について、人員削減の必要性がある状況下でなされたものとは認められるものの、使用者の財政状況が逼迫するなど経営破綻のおそれはなかったのであるから、教授らを整理解雇するのであれば、かかる整理解雇を回避するため、希望退職の募集や転退職の支援、事務職員等への配置転換の希望を募るのみではなく、総人件費の削減に向けた賃金の切下げ等の検討や、平成26年に新たに開設された人間教育学部又は保健医療学部への異動の可能性について検討すべく、教授らの専門分野や過去に担当した授業科目をも考慮に入れながら、平成29年度以降に人間教育学部又は保健医療学部で開講される科目の担当可能性を検討し、文部科学省によるAC教員審査で「可」の判定を受けるための手続を履践するなどの努力が求められていたというべきであるが、使用者は、結局のところ、希望退職の募集と転退職の支援、事務職員等への配置転換の希望を募るにとどまり、教授らの専門分野や担当できる科目の範囲を狭く捉え、教授らにおいて、人間教育学部又は保健医療学部で開講される科目を担当することはできないか、あるいは限られるものと即断し、両学部への異動の可能性の検討を一切しなかったものであるなどとし、無期雇用の教授らに対する整理解雇を無効とした。

 また、上記は有期雇用の教授である本件労働者にも当てはまるとして、期間途中の解雇を無効とした。

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