【解雇事件マニュアル】Q24期間途中の解雇の効力を争う間に契約期間が満了した場合はどうなるか
1 解説
有期労働契約の期間途中の解雇が無効であるとしても、解雇が無効と判断された時点(訴訟においては事実審の口頭弁論終結時)で既に契約期間が満了している場合には、地位確認及び期間満了後の賃金請求が認められるのであろうか。
この点、朝日建物管理事件(最高裁判決)・最一小判令元.11.7労判1223号5頁は、期間途中での解雇が無効である場合でも、その後に契約期間が満了していることが明らかである以上、契約が更新されたか否かについて判断されなければならないとして、原判決のうち、契約期間の満了により労働契約の終了の効果が発生するか否かを判断することなく、労働者の労働契約上の地位の確認請求及びその契約期間満了後の賃金の支払請求を認容した部分を破棄し、同部分につき高裁に差し戻した。
ジーエル(保全異議)事件・津地決平28.7.25労判1152号26頁は、期間途中の解雇を無効としたうえ、期間途中の解雇の意思表示には、今後当該労働者を雇用しないという雇止めの意思表示が含まれているとして、労働契約19条に基づいて期間満了時の雇止めの効力を判断している。「契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした」(労契法19条)という要件については、労働者が、労働組合を通じて使用者に対して期間途中の解雇の撤回を求めたり、仮処分を申し立てて雇用関係の継続を主張していることをもって、更新の申込みがあったものとしている。
契約更新が認められる場合、更新された契約の内容は従前の契約内容と同一となる。従前の契約期間が1年間であれば、更新後の契約も1年間の有期労働契約となる。
解雇後1回目の契約更新が認められる場合でも、口頭弁論終結前に2回目、3回目の契約期間満了が訪れることも考えられる。この場合も、1回目の期間満了時と同様、2回目、3回目の契約期間満了時の雇止めの効力がそれぞれ判断されることになるであろう。
2 裁判例
NHK神戸放送局(地域スタッフ)事件(一審判決)・大阪地判平26.6.5労判1098号5頁は、期間途中の解雇を無効としつつ、原告が労契法18条及び同法19条に基づく請求をしていないとして、契約期間の満了により契約は終了しているといわざるを得ないとして地位確認請求を却下している。口頭弁論終結前に契約期間満了日が到来している場合には、忘れずに雇止めの無効などを主張しておく必要がある。
期間途中の解雇を無効とした裁判例のうち、レラ・六本木販売事件・東京地判平28.4.15労経速2290号14頁、前掲ジーエル(保全異議)事件及び資生堂ほか1社事件・横浜地判平26.7.10労判1103号23頁は、解雇後の契約期間満了時点における雇止めを無効として地位確認請求まで認めている。
他方で、期間途中の解雇を無効とした裁判例のうち、東京地判令元.12.26判タ1493号176頁及びベストFAM事件・東京地判平26.1.17労判1092号98頁は、解雇後の契約期間満了時点における雇止めを有効としている。
仮処分における保全の必要性について、東大阪市環境保全公社事件・大阪地決平22.1.20労判1002号54頁は、平成21年9月11日に行われた期間途中の解雇後1回目の期間満了時点である同月30日における雇止めは無効としつつ、未だ到来していない2回目の期間満了時点である平成22年3月31日における雇止めの有効性については本件とは別個に考える必要があるなどとして、同日までに限って賃金仮払いの保全の必要性を認めた。