【解雇事件マニュアル】Q40育介法による育児・介護休業等の育児・介護支援措置の利用に対する解雇の禁止とは

1 育児休業等を理由とする解雇の禁止(10条)

(育介法10条)

 事業主は、労働者が育児休業申出等(育児休業申出及び出生時育児休業申出をいう。以下同じ。)をし、若しくは育児休業をしたこと又は第九条の五第二項の規定による申出若しくは同条第四項の同意をしなかったことその他の同条第二項から第五項までの規定に関する事由であって厚生労働省令で定めるものを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

(育介法9条の5)

1 略

2 出生時育児休業申出をした労働者(事業主と当該労働者が雇用される事業所の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、その事業所の労働者の過半数で組織する労働組合がないときはその労働者の過半数を代表する者との書面による協定で、出生時育児休業期間中に就業させることができるものとして定められた労働者に該当するものに限る。)は、当該出生時育児休業申出に係る出生時育児休業開始予定日とされた日の前日までの間、事業主に対し、当該出生時育児休業申出に係る出生時育児休業期間において就業することができる日その他の厚生労働省令で定める事項(以下この条において「就業可能日等」という。)を申し出ることができる。

3 前項の規定による申出をした労働者は、当該申出に係る出生時育児休業開始予定日とされた日の前日までは、その事業主に申し出ることにより当該申出に係る就業可能日等を変更し、又は当該申出を撤回することができる。

4 事業主は、労働者から第二項の規定による申出(前項の規定による変更の申出を含む。)があった場合には、当該申出に係る就業可能日等(前項の規定により就業可能日等が変更された場合にあっては、その変更後の就業可能日等)の範囲内で日時を提示し、厚生労働省令で定めるところにより、当該申出に係る出生時育児休業開始予定日とされた日の前日までに当該労働者の同意を得た場合に限り、厚生労働省令で定める範囲内で、当該労働者を当該日時に就業させることができる。

5 前項の同意をした労働者は、当該同意の全部又は一部を撤回することができる。ただし、第二項の規定による申出に係る出生時育児休業開始予定日とされた日以後においては、厚生労働省令で定める特別の事情がある場合に限る。

6以下 略

(育介則22条の2)

 法第十条の厚生労働省令で定めるものは、次のとおりとする。

一 法第九条の五第二項の規定による申出をしなかったこと。

二 法第九条の五第二項の規定による申出が事業主の意に反する内容であったこと。

三 法第九条の五第三項の規定により同条第二項の規定による申出に係る就業可能日等を変更したこと又は当該申出を撤回したこと。

四 法第九条の五第四項の同意をしなかったこと。

五 法第九条の五第五項の規定により同条第四項の同意の全部又は一部を撤回したこと。

 育介法10条は、使用者は、労働者が育児休業申出等(育児休業申出及び出生時育児休業申出)をしたこと、育児休業をしたこと、同法9条の5第2項から5項までの規定に関する事由であって厚生労働省令で定めるものを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないとしている。

 法9条の5第2項から5項までの規定に関する事由であって厚生労働省令で定めるものとは、以下の事項をいう(育介則22条の2)。

 ①就業可能日等の申出(育介法9条の5第2項)をしなかったこと

 ②申し出された就業可能日等が事業主の意に反する内容であったこと

 ③就業可能日等を変更、撤回(同条3項)したこと

 ④就業日等の同意(同条4項)をしなかったこと

 ⑤就業日等の同意の全部または一部を撤回(同条5項)したこと

 同法10条で禁止される同条の定める事項を理由とする解雇とは、当該事項との間に因果関係がある解雇である(子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置等に関する指針(平21.12.28号外厚生労働省告示第509号、以下「指針」という。)第2の11⑴)。

 『実務コンメ均等法等』215頁は、育児休業等の申出または取得をしたことを契機として不利益取扱いが行われた場合、原則として法違反となり、①業務上の必要性から不利益取扱いをせざるを得ず、業務上の必要性が、当該不利益取扱いにより受ける影響を上回ると認められる特段の事情が存在するとき(不利益取扱いや契機となった事由に有利な影響が存在する場合はその点を加味する)、②労働者が当該不利益取扱いに同意している場合において、当該育児休業および当該取扱いにより受ける有利な影響の内容や程度が、当該取扱いにより受ける不利な影響の内容や程度を上回り、当該取扱いについて、事業主から労働者に対して適切に説明がなされる等、一般的な労働者であれば同意するような合理的な理由が客観的に存在するときは例外的に法違反にならないとしている。

 また、『実務コンメ均等法等』215~216頁は、「契機として」については、基本的に育児休業等の申出または取得したことと時間的に近接して(1年以内)、当該不利益取扱いが行われたか否かをもって判断するとしている。

2 介護休業を理由とする解雇の禁止(16条)

(育介法16条)

 事業主は、労働者が介護休業申出をし、又は介護休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

 育介法16条は、使用者は、労働者が介護休業申出をし、又は介護休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないとしている。

 「理由として」の判断方法については、同法10条と同様であろう。

3 子の看護休暇を理由とする解雇の禁止(16条の4)

(育介法16条の4)

 第十六条の規定は、第十六条の二第一項の規定による申出及び子の看護休暇について準用する。

(育介法16条の2)

 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者は、その事業主に申し出ることにより、一の年度において五労働日(その養育する小学校就学の始期に達するまでの子が二人以上の場合にあっては、十労働日)を限度として、負傷し、若しくは疾病にかかった当該子の世話又は疾病の予防を図るために必要なものとして厚生労働省令で定める当該子の世話を行うための休暇(以下「子の看護休暇」という。)を取得することができる。

2以下 略

 育介法16条の4は、同法16条を準用し、労働者が同法16条の2の規定による子の看護休暇の申出をし、又は子の看護休暇を取得したことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないとしている。

 「理由として」の判断方法については、同法10条と同様であろう。

4 介護休業を理由とする解雇の禁止(16条の7)

(育介法16条の7)

 第十六条の規定は、第十六条の五第一項の規定による申出及び介護休暇について準用する。

(育介法16条の5)

 要介護状態にある対象家族の介護その他の厚生労働省令で定める世話を行う労働者は、その事業主に申し出ることにより、一の年度において五労働日(要介護状態にある対象家族が二人以上の場合にあっては、十労働日)を限度として、当該世話を行うための休暇(以下「介護休暇」という。)を取得することができる。

2以下 略

 育介法16条の7は、同法16条を準用し、労働者が同法16条の5の規定による介護休暇の申出をし、又は介護休暇を取得したことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないとしている。

 「理由として」の判断方法については、同法10条と同様であろう。

5 所定外労働の制限を理由とする解雇の禁止(16条の10)

(育介法16条の10)

 事業主は、労働者が第十六条の八第一項(前条第一項において準用する場合を含む。以下この条において同じ。)の規定による請求をし、又は第十六条の八第一項の規定により当該事業主が当該請求をした労働者について所定労働時間を超えて労働させてはならない場合に当該労働者が所定労働時間を超えて労働しなかったことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

(育介法16条の8)

 事業主は、三歳に満たない子を養育する労働者であって、当該事業主と当該労働者が雇用される事業所の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、その事業所の労働者の過半数で組織する労働組合がないときはその労働者の過半数を代表する者との書面による協定で、次に掲げる労働者のうちこの項本文の規定による請求をできないものとして定められた労働者に該当しない労働者が当該子を養育するために請求した場合においては、所定労働時間を超えて労働させてはならない。ただし、事業の正常な運営を妨げる場合は、この限りでない。

一 当該事業主に引き続き雇用された期間が一年に満たない労働者

二 前号に掲げるもののほか、当該請求をできないこととすることについて合理的な理由があると認められる労働者として厚生労働省令で定めるもの

2以下 略

(育介法16条の9)

 前条第一項から第三項まで及び第四項(第二号を除く。)の規定は、要介護状態にある対象家族を介護する労働者について準用する。この場合において、同条第一項中「当該子を養育する」とあるのは「当該対象家族を介護する」と、同条第三項及び第四項第一号中「子」とあるのは「対象家族」と、「養育」とあるのは「介護」と読み替えるものとする。

2 略

 育介法16条の10は、労働者が同法16条の8及び同法16条の9の規定による所定外労働の制限を請求をし、又はこれらの規定に基づき所定外労働をしなかったことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないとしている。

 「理由として」の判断方法については、同法10条と同様であろう。

6 時間外労働の制限を理由とする解雇の禁止(18条の2)

(育介法18条の2)

 事業主は、労働者が第十七条第一項(前条第一項において準用する場合を含む。以下この条において同じ。)の規定による請求をし、又は第十七条第一項の規定により当該事業主が当該請求をした労働者について制限時間を超えて労働時間を延長してはならない場合に当該労働者が制限時間を超えて労働しなかったことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

(育介法17条)

 事業主は、労働基準法第三十六条第一項の規定により同項に規定する労働時間(以下この条において単に「労働時間」という。)を延長することができる場合において、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者であって次の各号のいずれにも該当しないものが当該子を養育するために請求したときは、制限時間(一月について二十四時間、一年について百五十時間をいう。次項及び第十八条の二において同じ。)を超えて労働時間を延長してはならない。ただし、事業の正常な運営を妨げる場合は、この限りでない。

一 当該事業主に引き続き雇用された期間が一年に満たない労働者

二 前号に掲げるもののほか、当該請求をできないこととすることについて合理的な理由があると認められる労働者として厚生労働省令で定めるもの

2以下 略

(育介法18条)

 前条第一項、第二項、第三項及び第四項(第二号を除く。)の規定は、要介護状態にある対象家族を介護する労働者について準用する。この場合において、同条第一項中「当該子を養育する」とあるのは「当該対象家族を介護する」と、同条第三項及び第四項第一号中「子」とあるのは「対象家族」と、「養育」とあるのは「介護」と読み替えるものとする。

2 略

 育介法18条の2は、労働者が同法17条及び同法18条の規定による時間外労働の制限を請求し、又はこれらの規定に基づき時間外労働をしなかったことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないとしている。

 「理由として」の判断方法については、同法10条と同様であろう。

7 深夜労働の制限を理由とする解雇の禁止(20条の2)

(育介法20条の2)

 事業主は、労働者が第十九条第一項(前条第一項において準用する場合を含む。以下この条において同じ。)の規定による請求をし、又は第十九条第一項の規定により当該事業主が当該請求をした労働者について深夜において労働させてはならない場合に当該労働者が深夜において労働しなかったことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

(育介法19条)

 事業主は、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者であって次の各号のいずれにも該当しないものが当該子を養育するために請求した場合においては、午後十時から午前五時までの間(以下この条及び第二十条の二において「深夜」という。)において労働させてはならない。ただし、事業の正常な運営を妨げる場合は、この限りでない。

一 当該事業主に引き続き雇用された期間が一年に満たない労働者

二 当該請求に係る深夜において、常態として当該子を保育することができる当該子の同居の家族その他の厚生労働省令で定める者がいる場合における当該労働者

2以下 略

(育介法20条)

 前条第一項から第三項まで及び第四項(第二号を除く。)の規定は、要介護状態にある対象家族を介護する労働者について準用する。この場合において、同条第一項中「当該子を養育する」とあるのは「当該対象家族を介護する」と、同項第二号中「子」とあるのは「対象家族」と、「保育」とあるのは「介護」と、同条第三項及び第四項第一号中「子」とあるのは「対象家族」と、「養育」とあるのは「介護」と読み替えるものとする。

2 略

 育介法20条の2は、労働者が同法19条及び同法20条の規定による深夜労働の制限を請求し、又はこれらの規定に基づき深夜労働をしなかったことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないとしている。

 「理由として」の判断方法については、同法10条と同様であろう。

8 所定労働時間の短縮措置等を理由とする解雇の禁止(23条の2)

(育介法23条の2)

 事業主は、労働者が前条の規定による申出をし、又は同条の規定により当該労働者に措置が講じられたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

(育介法23条)

 事業主は、その雇用する労働者のうち、その三歳に満たない子を養育する労働者であって育児休業をしていないもの(一日の所定労働時間が短い労働者として厚生労働省令で定めるものを除く。)に関して、厚生労働省令で定めるところにより、労働者の申出に基づき所定労働時間を短縮することにより当該労働者が就業しつつ当該子を養育することを容易にするための措置(以下この条及び第二十四条第一項第三号において「育児のための所定労働時間の短縮措置」という。)を講じなければならない。ただし、当該事業主と当該労働者が雇用される事業所の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、その事業所の労働者の過半数で組織する労働組合がないときはその労働者の過半数を代表する者との書面による協定で、次に掲げる労働者のうち育児のための所定労働時間の短縮措置を講じないものとして定められた労働者に該当する労働者については、この限りでない。

一 当該事業主に引き続き雇用された期間が一年に満たない労働者

二 前号に掲げるもののほか、育児のための所定労働時間の短縮措置を講じないこととすることについて合理的な理由があると認められる労働者として厚生労働省令で定めるもの

三 前二号に掲げるもののほか、業務の性質又は業務の実施体制に照らして、育児のための所定労働時間の短縮措置を講ずることが困難と認められる業務に従事する労働者

2 事業主は、その雇用する労働者のうち、前項ただし書の規定により同項第三号に掲げる労働者であってその三歳に満たない子を養育するものについて育児のための所定労働時間の短縮措置を講じないこととするときは、当該労働者に関して、厚生労働省令で定めるところにより、労働者の申出に基づく育児休業に関する制度に準ずる措置又は労働基準法第三十二条の三第一項の規定により労働させることその他の当該労働者が就業しつつ当該子を養育することを容易にするための措置(第二十四条第一項において「始業時刻変更等の措置」という。)を講じなければならない。

3 事業主は、その雇用する労働者のうち、その要介護状態にある対象家族を介護する労働者であって介護休業をしていないものに関して、厚生労働省令で定めるところにより、労働者の申出に基づく連続する三年の期間以上の期間における所定労働時間の短縮その他の当該労働者が就業しつつその要介護状態にある対象家族を介護することを容易にするための措置(以下この条及び第二十四条第二項において「介護のための所定労働時間の短縮等の措置」という。)を講じなければならない。ただし、当該事業主と当該労働者が雇用される事業所の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、その事業所の労働者の過半数で組織する労働組合がないときはその労働者の過半数を代表する者との書面による協定で、次に掲げる労働者のうち介護のための所定労働時間の短縮等の措置を講じないものとして定められた労働者に該当する労働者については、この限りでない。

一 当該事業主に引き続き雇用された期間が一年に満たない労働者

二 前号に掲げるもののほか、介護のための所定労働時間の短縮等の措置を講じないこととすることについて合理的な理由があると認められる労働者として厚生労働省令で定めるもの 4 前項本文の期間は、当該労働者が介護のための所定労働時間の短縮等の措置の利用を開始する日として当該労働者が申し出た日から起算する。

 育介法23条の2は、労働者が同法23条1項の育児のための所定労働時間の短縮措置、同条2項の始業時刻変更等の措置及び同条3項の介護のための所定労働時間の短縮等の措置を請求し、又はこれらの規定による措置が講じられたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないとしている。

 「理由として」の判断方法については、同法10条と同様であろう。

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