Case534 団交応諾を命じる救済命令が確定していないことを理由とする団交拒否が組合の期待権を侵害し違法であるとされた事案・京都市(救済命令不実施)事件・京都地判令5.12.8労判1311.52

(事案の概要)

 原告労働組合ら(組合及びその下部組織)は、被告京都市が運営・委託する児童館等の職員が加入する労働組合として、平成2年から毎年のように京都市と団体交渉をしてきました。

 ところが、令和2年、京都市は組合らに対して京都市が労組法上の使用者に該当しないとして、組合らとの団体交渉を拒否しました。

 京都市は、京都府労働委員会に不当労働行為救済申立てをし、京都府労委は、京都市は原告らとの団体交渉に応じなければならない旨の救済命令(本件命令)を発しました。

 原告らは、本件命令後、京都市に対して繰り返し団体交渉を求めましたが、京都市は、本件命令に対して取消訴訟を提起し、本件命令が確定していないことを理由に団体交渉を拒否しました。

 本件は、組合らが京都市に対して、本件命令に違反する団交拒否を理由に国家賠償請求した事案です。

(判決の要旨)

 判決は、京都市の団交拒否は、本件命令によって課される公法上の義務に違反したとの点で違法であると評価することができるものの、そのことのみによって直ちに原告らの私法上の権利を侵害した違法があるとまではいえないとしました。

 もっとも、本件では、原告らと京都市との間において、団体交渉という呼称で、協議する機会が平成2年から令和元年までの約30年間にわたって持たれてきたことなどの事情に照らせば、原告らは、京都市を使用者として、京都市との間で団体交渉をすることに強い期待を有しており、かつそのような期待を有することには合理的な理由があるとしました。

 そして、京都市が、本件命令を受け、原告らから再三にわたり団体交渉の申入れを受けたにもかかわらず、不服申立てによる救済命令の未確定を理由に団体交渉に応じない態度をとっていることは、自らの従前の言動に違うものであって、原告らの合理的な期待を著しく損なう行動というべきであるとしました。

 以上より、本件命令が確定する前であっても、京都市が原告らの団体交渉に応じることに対する原告らの期待は、合理的なものとして、私法上の保護に値する利益というべきであり、このような利益が違法に侵害された場合には、国家賠償法に基づく損害賠償責任が生じることとなるとしたうえ、京都市は、本件命令による公法上の義務に違反して、団体交渉に係る原告らの合理的期待を侵害したとして、京都市に対して30万円の損害賠償を命じました。

※控訴

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