【解雇事件マニュアル】Q44労基法違反等の申告をしたこと等を理由とする解雇の禁止とは

1 労基法104条2項

(労基法104条)

 事業場に、この法律又はこの法律に基いて発する命令に違反する事実がある場合においては、労働者は、その事実を行政官庁又は労働基準監督官に申告することができる。

2 使用者は、前項の申告をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱をしてはならない。

 労基法104条1項は、労働者は、事業場に労基法又は労基法に基づいて発する命令に違反する事実がある場合に、その事実を行政官庁又は労働基準監督署に申告することができるとしている。

 そして、同条2項は、使用者は、労働者が上記申告をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないとしている。

 「理由として」とは、使用者が解雇その他不利益な取扱いをしたことについて、労働者が上記申告をしたという事実が決定的な動機になっている場合をいい、使用者の表面上の理由にとらわれず、解雇等をするに至った経緯、他の労働者との対比等一切の要素を勘案して総合的に判断しなければならないとされている(厚労省『労基法下』1104頁)。太洋鉄板事件・東京地決昭25.12.28労民集1巻6号1039頁は、会社の主張する解雇理由について疎明がないことを確認したうえ、解雇が労基署の災害補償決定がなされた直後に行われたこと、会社代表者が労基署から災害補償決定書の送付を受けて間もなく労働者らに対して、会社の機密を外部へ洩らすような者を雇用しておくわけにはいかない旨の発言をしたこと等の事実を総合すれば会社の解雇の決定的な理由は労働者らが労基法に違反する事実を労基署に申告したことにあると判断せざるを得ないとして、労基法104条2項により解雇を無効とした。

 同条項に違反する解雇は無効である(前掲太洋鉄板事件)。

2 労基法の特別法

(最賃法34条)

 労働者は、事業場にこの法律又はこれに基づく命令の規定に違反する事実があるときは、その事実を都道府県労働局長、労働基準監督署長又は労働基準監督官に申告して是正のため適当な措置をとるように求めることができる。

2 使用者は、前項の申告をしたことを理由として、労働者に対し、解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

(労安衛法97条)

 労働者は、事業場にこの法律又はこれに基づく命令の規定に違反する事実があるときは、その事実を都道府県労働局長、労働基準監督署長又は労働基準監督官に申告して是正のため適当な措置をとるように求めることができる。

2 事業者は、前項の申告をしたことを理由として、労働者に対し、解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

(じん肺法43条の2)

 労働者は、事業場にこの法律又はこれに基づく命令の規定に違反する事実があるときは、その事実を都道府県労働局長、労働基準監督署長又は労働基準監督官に申告して是正のため適当な措置をとるように求めることができる。

2 事業者は、前項の申告をしたことを理由として、労働者に対して、解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

(賃確法14条)

 労働者は、事業主にこの法律又はこれに基づく命令の規定に違反する事実があるときは、その事実を都道府県労働局長、労働基準監督署長又は労働基準監督官に申告して是正のため適当な措置をとるように求めることができる。

2 事業主は、前項の申告をしたことを理由として、労働者に対し、解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

 最賃法34条2項、労安衛法97条2項、じん肺法43条の2第2項及び賃確法14条2項は、労基法104条2項と同様、使用者が、労働者が都道府県労働局長、労働基準監督署長又は労働基準監督官に法令違反の事実を申告したことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないとしている。

3 船員法・港湾労働法

(船員法102条)

船員は、この法律、労働基準法又はこの法律に基づいて発する命令に違反する事実について、第百十八条の五第一項に規定する特定小型船舶(次項において「特定小型船舶」という。)の乗組員は、この法律又はこの法律に基づいて発する命令に違反する事実について、それぞれ、国土交通省令で定めるところにより、国土交通大臣、地方運輸局長、運輸支局長、地方運輸局、運輸監理部若しくは運輸支局の事務所の長又は船員労務官にその事実を申告することができる。

2 船舶所有者又は第百十八条の五第一項に規定する特定小型船舶所有者は、前項の申告をしたことを理由として、船員又は特定小型船舶の乗組員を解雇しその他船員又は特定小型船舶の乗組員に対して不利益な取扱いをしてはならない。

(港湾労働法44条)

港湾労働者は、事業主が第三章(これに基づく命令を含む。)又は前条の規定に違反する事実がある場合においては、その事実を公共職業安定所長に申告することができる。

2 事業主は、前項の申告をしたことを理由として、港湾労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

 船員法102条2項及び港湾労働法44条2項は、労基法104条2項と同様、使用者が、労働者が国土交通大臣、地方運輸局長、運輸支局長、地方運輸局、運輸管理部もしくは運輸支局の事務所の長または船員労務官や公共職業安定所長に法令違反の事実を申告したことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないとしている。

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