Case543 技能実習生の在留資格変更手続きができなかったことについて会社と監理団体の説明義務違反が認められた事案・佐山鉄筋工業・海外事業サポート協同組合事件・大阪地判令5.9.28労判1314.80

(事案の概要)

 ベトナム国籍の原告労働者は、技能実習生として、被告会社と雇用期間を平成30年7月から令和3年6月とする雇用契約を締結し、被告会社で働いていました。

 原告の技能実習第1号ロの在留資格に基づく在留期間は令和元年6月8日までで、それ以降在留するためには、技能実習2号ロへの在留資格の変更が必要でした。

 被告会社は、在留資格の変更のための手続きを申請していましたが、労基署から是正勧告を受けていたために手続きが止まっていました。被告会社は、令和元年6月5日、原告に対し、在留資格変更の手続きが間に合わないので一旦ベトナムに帰るよう指示しました。

 原告には、技能実習2号ロへの在留資格の変更ができるまで短期滞在の在留特別許可を受けるという手段(本件方法)がありましたが、被告会社は、原告にそのことを説明しませんでした。

 原告は、令和元年6月7日の元を離れて、他の会社で技能実習を継続することを目指しましたが同年12月12日に退去強制手続きのために入管に収容されました。その後、原告は令和2年1月31日に仮放免され、同年3月30日に短期滞在(90日間)の在留特別許可を受け、同年6月から別の会社で技能実習を行うようになりました。

 本件は、原告が、被告会社及び技能実習の監理団体である被告組合に対して、在留資格の変更ができなかったことによる損害の賠償を求めた事案です。

(判決の要旨)

 判決は、本件雇用契約の目的及び内容並びに技能実習制度の仕組みに照らせば、被告会社は、原告に対し、原告が技能実習1号ロによる在留期間満了までに技能実習生2号ロへの在留資格の変更ができるよう、技能実習1号ロによる在留期間満了までに技能実習計画を作成して機構による認定を受けるべき義務を負っていたとしました。

 また、被告会社は、原告に対し、本邦に在留しながら技能実習2号ロの在留資格変更手続を行うために取り得る手段の有無を調査して、これを原告に対して説明すべき義務を負っていたとしました。

 そして、被告会社は、原告に対し、遅くとも令和元年6月8日までに、本件方法による在留資格変更手続きを行うことができる旨を説明すべきであったのにこれを説明しなかった説明義務違反があるとしました。また、被告組合にも同様の義務違反があったとしました。

 判決は、被告らに対して、不法行為に基づき、原告が就労できなかった期間の休業損害や慰謝料30万円等の賠償を命じました。

※控訴

Follow me!