Case544 上司らのいじめによる自殺について使用者の安全配慮義務違反が認められた事案・誠昇会北本共済病院事件・さいたま地判平16.9.24労判883.38

(事案の概要)

 本件労働者は、被告法人が運営する病院において、被告上司の下で看護師として働いていました。

 本件労働者は、3年近く、被告上司らから、①仕事でミスをしたときに乱暴な言葉を使ったり、手を出したりする、②家の掃除、車の洗車、長男の世話、風俗店やパチンコ店への送迎、馬券購入などの私用をさせる、③仕事だと嘘をついて恋人とデート中の本件労働者を病院に呼び出す、④職員旅行の際に飲食代約9万円を負担させる、⑤職員旅行の際に事務職の女性と性的な行為をさせてそれを撮影させようとする、⑥仕事中になにかあると「死ねよ」と発言したり、「殺す」とメールで送信する、⑦恋人からプレゼントされた帽子をライターで燃やすふりをしたり、食べ物を口でキャッチするようにと投げつける、などのいじめを受け、自殺しました。

 本件は、本件労働者の両親である原告らが、被告法人及び被告上司に対して慰謝料請求した事案です。

(判決の要旨)

 判決は、被告上司は、自ら又は他の看護師を通じて、本件労働者に対し、冷やかし・からかい、嘲笑・悪口、他人の前で恥辱・屈辱を与える、たたくなどの暴力等の違法な本件いじめを行ったものと認められるとし、被告上司の不法行為責任を認めました。

 また、判決は、被告法人は、職場の上司及び同僚からのいじめ行為を防止して、本件労働者の生命及び身体を危険から保護する安全配慮義務を負っていたとしました。そして、本件いじめが3年近くに及んでいたことや、出来事の一部は被告法人も認識が可能であったことなどから、被告法人には、本件いじめを認識することが可能であったにもかかわらず、これを認識していじめを防止する措置を採らなかった安全配慮義務違反の債務不履行があったとしました。

 判決は、被告上司に対して慰謝料1000万円の支払を命じ、そのうち500万円については被告法人も連帯して責任を負うとしました。

※控訴

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