Case551 就業規則には試用期間の定めがあるものの個別契約上の合意で試用期間が設けられなかったと認定された事案・DoCLASSE事件・東京地判平30.5.31
(事案の概要)
およそ27年間にわたる経理財務部門での職務経験を有する原告労働者は、被告会社にCFO(最高財務責任者)として雇用されました。
被告の就業規則には、「新たに採用する者については採用の日から4または6か月の「試用のための有期の雇用期間」を設ける。」旨がさだめられていましたが、原告の雇用条件通知書兼内定通知書には期間の定めについて記載されておらず、口頭での説明もありませんでした。
被告は、原告の採用から6か月後に、試用期間満了による本採用拒否であるとして、能力不足等を理由として原告を解雇しました。
本件は、原告が被告に対して、解雇の無効を主張して雇用契約上の地位の確認等を求めた事案です。
(判決の要旨)
判決は、原告被告間においては、試用のための有期の雇用期間について定めた就業規則の存在にもかかわらず、個別契約で本件雇用契約上の合意によって試用期間が設けられなかったとして、原告について試用期間の定めはないものとして本件解雇を普通解雇として扱いました。
そして、能力不足とされる点について注意指導もなく解雇の客観的合理的理由を欠き、試用期間がないことを認識しながら試用期間満了に基づく本採用拒否として処理しようとし、注意指導を何ら行うこともなく客観的な事実調査も経ることなくされた本件解雇には社会的相当性は微塵もないとして、本件解雇を無効としました。