Case570 外国政府機関に対する残業代請求が民事裁判権免除の対象にならないとして認められた事案・イタリア共和国外務・国際協力省事件・大阪地判令5.3.22労判1322.48
(事案の概要)
本件は、被告イタリア共和国外務・国際協力省が日本で開設する本件会館の職員として勤務していた原告労働者(日本人)が、被告に対して残業代請求等をした事案です。
原告は、被告による本採用拒否の効力を争い地位確認請求もしていましたが、本件における本採用拒否は対外国民事裁判権法9条2項3号の採用に関する訴えに当たり、被告は日本の民事裁判権から免除されるとして却下されています。
(判決の要旨)
判決は、外国等が日本の裁判権から免除されない「労働契約」(対外国民事裁判権法9条1項)とは、これが公法上または私法上の法律関係のいずれであるかにかかわらず、労働契約法上の労働契約と同様に、労働者が使用者の指揮命令下において労務を提供し、使用者がその対価として労働者に対して賃金を支払う勤務関係をいうとしたうえ、本件における原告と被告との間の契約が「労働契約」に当たるとし、被告は残業代請求について日本の民事裁判権から免除されないとしました。
また、労基法のうち労働時間規制や割増賃金の支払義務等労働条件に関する規定は強行法規であるから、法の適用に関する通則法12条及び8条のもとで、準拠法の選択の有無にかかわらず、準拠法は日本法になるとしました。
そして、原告が所定終業時刻以降本件会館から退勤するまでの間の残業について、少なくとも被告の黙示的な残業命令に基づくものであったとして、残業代請求を一部認めました。
※控訴