Case554 試用期間途中の本採用拒否には試用期間満了時に比べてより一層高度の合理性と相当性が求められるとされた事案・ニュース証券事件・東京高判平21.9.15労判991.153
(事案の概要)
原告労働者は、証券会社である被告会社と試用期間6か月の無期雇用契約を締結し、平成19年5月21日から営業職の課長として勤務していました。
会社は、試用期間中である同年9月3日、営業担当としての資質を欠くとして、原告を解雇(本採用拒否)しました。
本件は、原告が、会社に対して、試用期間中の解雇の無効を主張し、雇用契約上の地位確認や慰謝料の支払い等を求めた事案です。
(判決の要旨)
判決は、試用期間が経過した時における本採用拒否が、解約につき客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当と是認され得る場合に制限されるとしたうえ、6か月の試用期間の経過を待たずして会社が行った本件解雇には、より一層高度の合理性と相当性が求められるとしました。
そして、原告の手数料収入は高いものとはいえないが、原告と会社との間では、原告の資質、性格、能力等を把握し、会社の従業員としての適性を判断するために6か月の試用期間を定める合意が成立しているのであって、会社がわずか3か月強の期間の手数料収入のみをもって原告の資質、能力等が会社の従業員としての適格性を有しないとし判断して本件解雇をすることは、試用期間を定めた合意に反して会社の側で試用期間を原告の同意なく短縮するに等しいものというべきであって、原告が業務上横領等の犯罪を行ったり、会社の就業規則に違反する行為を重ねながら反省するところがないなど、試用期間の満了を待つまでもなく原告の資質、性格、能力等を把握することができ、会社の従業員としての適性に著しく欠けるものと判断することができるような特段の事情が認められるのであれば格別、合意した試用期間である6か月間における原告の業務能力又は業務遂行の状態を考慮しないで会社が行った本件解雇は、客観的に合理的な理由がなく社会通念上相当として是認することができないとして、本件解雇を無効とし、慰謝料150万円も認めました。
もっとも、原告は解雇後の転職により就労意思を失ったとして、地位確認は否定されました。
※確定