【解雇事件マニュアル】Q60本採用拒否を有効とした近時の裁判例は

日本オラクル事件・東京地判令3.11.12労経速2478号20頁

 原告労働者は、通信業界の専門家である「テレコム・イノベーション・アドバイザー(テレコム・イノベーター)」として賃金月額130万円、試用期間平成31年2月1日から3か月間の条件で被告会社に中途採用された。

 原告は、平成31年4月22日に上司から本採用しない旨を通知され、同月24日には人事から試用期間を延長せず、同年5月末日を最終出勤日とする旨を告げられた。なお、その後原告の解雇日は同年6月末日に変更された。解雇理由としては、基本的なコミュニケーションスキルに欠けており、顧客が聞きたい内容に答えられなかったり、特定のテーマに固執したために、顧客の期待との間にずれが生じたりと、顧客とのコミュニケーションに問題があることなどが挙げられた。

 判決は、平成31年4月22日及び同月24日をもって、会社が、原告に対して、試用期間内に、本件雇用契約により留保された解約権を行使する旨の意思表示(本件解雇)を確定的にしたとし、留保された解約権を行使する旨の意思表示が、試用期間内に確定的にされた場合には、労働者の地位を不当に不安定にするものでない限り、解雇の効力発生日が試用期間満了日よりも後にされたとしても、なお上記留保された解約権の行使としての解雇と扱われることになるものと解されるとした。

 そして、原告は、大学新卒者の新規採用等とは異なり、その職務経験歴等を生かして、高度な業務の遂行が期待され、かつそれに見合った待遇を受ける、いわゆる即戦力となる高度人材として採用されたものであり、かつ、原告もその採用の趣旨を理解していたと認めるのが相当であるとしたうえ、原告については、その職務経験歴等を生かして、高度な業務の遂行が期待され、かつそれに見合った待遇を受けるという採用の趣旨を前提とすれば、そのコミュニケーション能力が、テレコム・イノベーターに求められる水準に達していないことを、試用期間中の執務状況等についての観察等によって、会社が知悉したということができるから、原告を引き続き雇用しておくことが適当でないという会社の判断は、評価最終決定権の留保の趣旨に照らして客観的に合理的理由を欠くものでなく、社会通念上相当であったと認められ、したがって、本件解雇は、権利の濫用には当たらず、有効なものというべきであるとした。

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