【不当解雇、契約締結上の過失】Case578 採用過程で予定されていた職場を用意できず就労に至らなかったことについて使用者の損害賠償責任が認められた事案・わいわいランド(解雇)事件・大阪高判平13.3.6労判818.73

(事案の概要)

 保育所を経営する被告会社は、Z社から保育ルームの業務委託を受けることを見込んで、原告労働者A及びBに就職の勧誘を行い、原告らに雇入通知書等を交付しました。原告Aはこれを承諾し就労開始日も決定していました。原告Bは、「考えさせてほしい」と合意を留保していました。原告Aは、前職の幼稚園を退職し、原告Bも、前職に退職の意向を伝えたうえ、他の幼稚園からの勧誘を断っていました。その後、被告会社とZ社との間の業務委託契約が成立しなかったため、被告会社は原告らに対して「この話はなかったことに」などとして就職を白紙にしました。

 本件は、原告らが被告会社に対して、上記経緯は不当解雇に当たるとして、また契約締結上の過失があるとして損害賠償請求した事案です。

(判決の要旨)

1 解雇

 原告Aについて、判決は、被告会社が雇入通知書を交付し就労開始日を合意した時点で期間の定めのない雇用契約が成立しており、本件は解雇に当たるとしましたが、本件解雇は予定していたZ社の業務の委託を受けることができなくなったという客観的な事実を理由とするものであり、やむを得ないものであるから有効であるとし、解雇予告期間の1か月分の賃金請求のみ認めました。

 原告Bについては、原告Bが合意を留保していたことから雇用契約は成立していないとしました。

2 契約締結上の過失

 判決は、原告らが被告会社と雇用契約を結ぼうとする場合には、勤務先の解約ないし転職予定の断念が必要であるとしたうえ、「被告会社は、原告らの信頼にこたえて、自らが示した雇用条件をもって原告らの雇用を実現し雇用を続けることができるよう配慮すべき信義則上の注意義務があったというべきである。また、副次的には原告らが被告会社を信頼したことによって発生することのある損害を抑止するために、雇用の実現、継続に関係する客観的な事情を説明する義務もあったということができる」として被告会社の注意義務、説明義務を認め、被告会社は、①Z社との委託契約の成立について誤って判断した、②折衝経過・内容を原告らに説明することなく、委託契約の成立があるものとして雇用契約を勧誘した、③その結果、原告Aについては契約を締結したものの就労の機会もなく失職させ、原告Bについては契約を締結することなく失職させたとし、被告会社の一連の行為は、全体としてこれをみると、原告らが雇用の場を得て賃金を得ることができた法的地位を違法に侵害した不法行為に当たるとしました。

 そして、原告Aについて給与5か月分の逸失利益及び慰謝料50万円、原告Bについて給与4か月分の逸失利益及び慰謝料40万円の損害を認めました。

※上告

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