【不当解雇】Case650 懲戒処分に関する指針が周知されていたとはいえないとし酒気帯び運転を理由とする懲戒免職処分を無効とした事案・大阪市教委(高校管理作業員・懲戒免職)事件・大阪地判平21.7.1労判992号23頁

【事案の概要】

原告労働者Xは、大阪市立の定時制高校で管理作業員(現業職)として勤務していた大阪市の職員です。

Xは、平成19年11月、公務外で酒気帯び運転を行い、警察による検問で検挙されました。 これに対し、大阪市教育委員会は、平成18年11月に策定した「懲戒処分に関する指針」(飲酒運転をした教職員は原則として免職とする等の基準を定めたもの)に基づき、Xの行為が地方公務員法33条の信用失墜行為等に該当するとして、Xを懲戒免職処分(本件処分)としました。

Xは、処分の取り消しを求めて提訴しました。

【判決の要旨】

裁判所は「懲戒権者が前記の裁量権の行使としてした懲戒処分は、それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し、これを濫用したと認められる場合でない限り、その裁量権の範囲内にあるものとして、違法とならないものというべきである。したがって、裁判所が前記の処分の適否を審査するにあたっては、懲戒権者と同一の立場に立って懲戒処分をすべきであったかどうか又はいかなる処分を選択すべきであったかについて判断し、その結果と懲戒処分とを比較してその軽重を論ずべきものではなく、懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法であると判断すべきものである。これら判断手法は、地方公務員にも妥当するものである。」とする最高裁の規範を引用したうえ、以下のとおり判断しました。

1.現業職員に対する指針の「周知」

被告大阪市は、職員集会、掲示板、レターケースへの配布を通じて本件指針を周知していたと主張しましたが、裁判所は、日常的に文書に親しむ機会が少ない現業職員への周知のあり方について、「本件指針は、個々の教職員にとつて如何なる場合に懲戒処分を受けるか、また、どの程度の処分を受けるか、その基準を定めたものであつて、特に、免職事由は、個々の教職員の身分関係に直接関係する重要な事項であつて、その身分に大きな影響を与えるものである。また、飲酒運転についてはそれまでの取扱に比して、原則免職と厳罰化方向で定められたものであつた。このような内容をもつ本件指針が、日常の職務の中で文書に親しむことが比較的少ない原告のような管理作業員を含む現業の職員に対して周知されたと言えるためには、文書を直接交付し、口頭で直接、懲戒処分、特に免職に至るまでの懲戒事由に関する指針が記載された重要な文書であることを告げる等、個々の職員の注意を引くような方法でその周知がなされなければならず、単に文書を配布すればそれでもつて足りるといえるかは疑問である。」として、周知の事実を否定しました。

2.裁量権の逸脱濫用

裁判所は、Xの酒気帯び運転が重大な非違行為であることは前提としつつも、

・人身事故や物損事故を起こしていないこと

・教員とは地位・職責が異なり、生徒に対する教育指導を行う立場ではないこと(管理作業員としての業務に直ちに支障が生じたわけではないこと)

・公務上ではなく私的行為としてなされたこと

・これまで懲戒処分歴がないこと

などの事情を総合考慮し、「原告に対して職員の身分を失わしめるという本件処分を科すことは過酷というべきであって、重きに失し、社会的相当性を逸脱しているというべきである。」 「保護者や市民に対する関係において少なからぬ信用失墜を招いたものではあるが、それは懲戒免職処分によってしか回復できないとまでいうことはできず、それ以下の停職処分によっても回復することができるというべきである。」などとして、懲戒免職処分は社会的相当性を逸脱しており裁量権の逸脱濫用にあたるとして違法と判断し、Xに対する本件処分を取り消しました。

※控訴

Follow me!