Case232 顧客車両の運行・保守管理を業務とする運転手について自宅近くの車庫と顧客の自宅を顧客車両で移動する時間が労働時間に当たるとして過労死に対する会社の安全配慮義務違反が認められた事案・セーフティ事件・横浜地判令4.4.27労働判例ジャーナル125.1

(事案の概要)

 本件労働者は、会社役員車等の運行・保守管理の請負等を業とする被告会社に雇用され、顧客の役員付の運転手として勤務し、月平均約150時間の時間外労働の末、勤務中に心筋梗塞を発症して死亡しました。本件労働者には血管病変等の基礎疾患がありました。

 本件は、本件労働者の遺族が、会社の安全配慮義務違反を主張して損害賠償請求した事案です。

 会社は、本件労働者が自宅近くの車庫から役員の自宅まで顧客の車で往復していた時間は通勤時間、走行していない待機中は休憩時間であり労働時間ではないと主張しました。

(判決の要旨)

 判決は、本件労働者の業務は、運転業務だけに限られず管理車両の管理全般であったことから、顧客の車を運転して車庫から役員の自宅を往復する車両運行は当然業務の一環であり、労働時間に当たるとしました。

 また、待機中も仮眠を取れるような状況になく、顧客の要望に応えて運転業務等を行う可能性があることから、待機中の時間も労働時間に当たるとしました。

 そのうえで、長時間の過重業務等によって疲労の蓄積が生じ、これが血管病変等をその自然経過を超えて著しく増悪させ、その結果、心筋梗塞を発症させたとし、業務起因性を認めました。

 そして、会社は本件労働者が作成した日報や毎月の労働時間が記載された給与管理表等を確認すれば本件労働者が健康を損なう恐れがあったことを容易に知り得たとして、会社の安全配慮義務違反を認めました。

 基礎疾患による過失相殺は否定されました。

Follow me!