Case289 法令に反して有給休暇を不承認とし出勤を支持する警告書を破り捨てたことや業務の引継ぎに応じなかったことなどを理由とする解雇が無効とされた事案・大尊製薬事件・大阪地判令4.9.29
(事案の概要)
被告会社は、原告労働者に対して、原告が行っていた総務経理業務を他の従業員に引き継ぐよう命じ、それ以降原告に対して多数の注意書や警告書等の文書を送付し、そこには賃金を半額以下に減額する旨を通知するもの、関係証拠上認められない原告の能力不足を指摘するもの、法令に反して有給休暇の取得を認めないものが含まれていました。
原告は、有給休暇の取得を認めないとする警告書を破り捨てたり、直ちに引継ぎに応じなかったりしました。
会社は、能力不足や勤務態度の不良を理由に原告を解雇しました。
本件は、原告が解雇無効を主張し、会社に対して雇用契約上の地位確認等を求めた事案です。
(判決の要旨)
判決は、会社が主張する解雇理由に該当する行為のうち、原告が会社からの注意や指示に応じない姿勢を示した点が認められるにとどまり、そのうち警告書を破り捨てた点については、その態様に不相当な点は認められるものの、当該警告書は有給休暇の不承認と出勤指示を内容とするものであって法令上許容されない業務上の指示・命令であるから、これをもって勤務態度が著しく不良とはいえないとしました。
また、上司に対して忙しいなどと言って業務上必要な引継ぎに当初応じなかった点は適切とはいい難いが、会社による注意指導等の経過及び内容は不相当なものであったというほかなく、原告の勤務態度が著しく不良であるとはいえないとし、本件解雇を無効としました。