【解雇事件マニュアル】Q4労基法20条の解雇予告制度とは
(労基法20条) 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。 ② 前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。 ③ 前条第二項の規定は、第一項但書の場合にこれを準用する。 (労基法19条) ② 前項但書後段の場合においては、その事由について行政官庁の認定を受けなければならない (労基法21条) 前条の規定は、左の各号の一に該当する労働者については適用しない。但し、第一号に該当する者が一箇月を超えて引き続き使用されるに至つた場合、第二号若しくは第三号に該当する者が所定の期間を超えて引き続き使用されるに至つた場合又は第四号に該当する者が十四日を超えて引き続き使用されるに至つた場合においては、この限りでない。 一 日日雇い入れられる者 二 二箇月以内の期間を定めて使用される者 三 季節的業務に四箇月以内の期間を定めて使用される者 四 試の使用期間中の者 |
1 解雇予告
使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前にその予告をしなければならない(解雇予告義務、労基法20条1項本文前段)。
これは、民法上原則2週間で足りるとされている解雇予告期間(民法627条1項)を、労働者が突然の解雇から被る生活の困窮を緩和する趣旨から原則30日間に延長したものである(厚労省『労基法上』295頁)。
解雇であれば、普通解雇であろうと懲戒解雇であろうと、または整理解雇であろうと労基法上の解雇予告義務が適用される(厚労省『労基法上』297条)。
2 解雇予告手当
30日前に予告をしない使用者は、予告に代えて原則として30日分以上の平均賃金を支払わなければならない(解雇予告手当、労基法20条1項本文後段)。つまり、使用者は平均賃金30日分の解雇予告手当を支払うことによって、労働者を即時解雇することができる。
また、即時解雇の場合でなくても、使用者は解雇予告手当を支払うことによって、その日数分解雇予告期間を短縮することができる(労基法20条2項)。つまり、例えば平均賃金15日分の解雇予告手当を支払うことで、解雇予告期間を15日間とすることができる。
解雇予告手当によって労働者を解雇する場合には、解雇予告手当の支払(現実の提供)が解雇の効力発生要件となる。
解雇予告手当は、労基法20条の特別な手当であって賃金ではない。
3 解雇予告除外事由
①天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合、又は②労働者の責めに帰すべき事由に基づいて解雇する場合には、労基法20条1項本文の解雇予告義務は適用されない(同項但書)。これらの場合には、使用者は解雇予告手当の支払をせずに労働者を即時解雇することができる。
これらの解雇予告除外事由については、行政官庁の認定を受けなければならないとされている(解雇予告除外認定、労基法20条3項・同19条2項)。除外認定をする行政官庁は労働基準監督署長である。もっとも、除外認定は即時解雇の効力発生要件ではなく、客観的に除外事由が存在する場合には除外認定のない即時解雇も有効である。
4 適用除外(労基法21条)
労基法20条の解雇予告義務は、次のいずれかに該当する労働者については適用されない。
①日日雇い入れられる者(1号)
「日日雇い入れられる者」とは、1日単位の契約期間で雇われ、その日の終了によって労働契約も終了する契約形式の労働者である(厚労省『労基法上』333頁)。
ただし、日々雇用される労働者が1か月を超えて引き続き雇用された場合には、例外的に解雇予告義務が適用される(労基法21条但書)。1か月は、労働日のみならず休日を含む暦日でカウントされる(厚労省『労基法上』334頁、菅野ら『労働法』746頁)。1か月の計算は、労基法上特別の規定がないため、民法143条2項により起算日から翌月の起算日に応答する日の前日までと解される(厚労省『労基法上』334頁)。1か月を超えて引き続き雇用されたといえるためには、必ずしも毎日雇用される必要はなく、専ら同一の事業場の業務に従事していたといえるかを個別具体的に判断することになる(厚労省『労基法上』334~335頁)。
②二箇月以内の期間を定めて使用される者(2号)
ただし、2か月以内の期間を定めて雇用された者が、2か月を超えて引き続き雇用された場合には、解雇予告義務が適用される(労基法21条但書)。
③季節的業務に四箇月以内の期間を定めて使用される者(3号)
「季節的業務」とは、春夏秋冬の四季、あるいは結氷期、積雪期、梅雨期等の自然現象に伴う業務をいい、夏の海水浴場の業務、農業や漁業における収穫期の手伝いなどがこれに該当する(厚労省『労基法上』336頁)。
ただし、季節的業務4か月以内の期間を定めて雇用された者が、4か月を超えて引き続き雇用された場合には、解雇予告義務が適用される(労基法21条但書)。
④試の使用期間中の者(4号)
試用期間中の労働者にも、原則として解雇予告義務が適用されない。
ただし、試用期間中の労働者が、14日を超えて引き続き雇用された場合には、解雇予告義務が適用される(労基法21条但書)。14日は、労働日のみならず休日を含む暦日でカウントされる(菅野ら『労働法』746頁)。
5 付加金及び罰則
⑴ 付加金
使用者が解雇予告手当を支払わない場合、裁判所は、使用者に対して、使用者が支払わなければならない解雇予告手当と同額の付加金の支払を命じることができる(労基法114条)。
⑵ 罰則
労契法20条違反には、6か月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金という罰則がある(労基法119条1号)。