【解雇事件マニュアル】Q20有期労働契約の期間途中の解雇の要件は
当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
民法628条
使用者は、期間の定めのある労働契約(以下この章において「有期労働契約」という。)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。
労契法17条1項
民法628条は、有期労働契約(雇用契約)であっても、やむを得ない事由があるときは、使用者は労働者を解雇することができるとしている。労契法17条1項は、民法628条の反対解釈として、有期労働契約について、使用者はやむを得ない事由がなければ労働者を解雇することができないことを確認している。
なお、民法628条は「直ちに」としているが、有期労働契約の期間途中の解雇にも労基法20条の解雇予告制度が適用される。
有期労働契約の期間中は、原則として契約継続が保障されていることから、「やむを得ない事由」とは、無期労働契約における①客観的合理性及び②社会的相当性(労契法16条)よりも限定された、より重大な事由であることが求められる。プレミアライン(仮処分)事件・宇都宮地栃木支決平21.4.28労判982号5項は、期間途中の解雇の要件は、労契法16条の①客観的合理性及び②社会的相当性よりも厳格なものであり、このことを逆にいえば、労契法16条の無効の要件を充足するような期間途中の解雇は、明らかに無効であるとしている。
具体的には、①客観的合理性及び②社会的相当性に加えて、期間満了を待たずに直ちに雇用を終了させざるを得ない特段の重大な事由が存在することが必要と解される(水町『詳解労働法』416頁)。学校法人東奥義塾事件・仙台高秋田支判平24.1.25労判1046.22も、「(労契)法17条1項にいうやむを得ない事由とは、客観的に合理的な理由及び社会通念上相当である事情に加えて、当該雇用を終了せざるを得ない特段の事情と解するのが相当である。」としている。
「やむを得ない事由」の立証責任は使用者が負う(菅野ら『労働法』831頁)。 労契法17条1項は強行法規である(菅野ら『労働法』831頁)。