Case523 労働者派遣契約の中途解約を理由とする解雇を無効とし不就労について派遣元に民法536条2項の帰責性が認められるとした事案・ワークプライズ(仮処分)事件・福井地決平21.7.23労判984.88
(事案の概要)
本件労働者ら4名は、使用者である派遣元と有期雇用契約を締結し、派遣先に派遣されていました。
派遣元は、派遣先の経営状態に起因する労働者派遣契約の中途解約を理由に、本件労働者らを期間途中に解雇しました。
本件は、本件労働者が派遣元に対して、期間途中の解雇の無効を主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることを仮に定めることと、賃金の仮払いを求めた事案である。
(決定の要旨)
1 期間途中の解雇の有効性
決定は、派遣先の経営状態に起因する労働者派遣契約の中途解約をもって、直ちに使用者である派遣元が派遣労働者を解雇する「やむを得ない事由」があるとは認められないとしました。
また、派遣元は、会社存続の観点から已むに止まれず実施した解雇であると主張しましたが、派遣元の経営内容、役員報酬など、経営状態やその経営努力について何ら具体的な状況の疎明がないとして、解雇を無効とし、労働契約上の権利を有する地位にあることを仮に定めることを認めました。
2 賃金請求
派遣元は、派遣先から派遣契約を打ち切られて将来の収入を閉ざされた派遣元の経営破綻を回避するべく、やむを得ず解雇に及んだものであって、本件解雇事由は外部起因性、防止不可能性を有する『経営上の障害』によるものであるから、民法536条2項の帰責事由がなく、賃金請求権も消滅していると主張しました。
決定は、確かに、派遣元は、派遣を求める派遣先企業の存在があってはじめて派遣労働者に労働の場を提供できるうえ、その需要も様々な要因により変動するものであり、派遣労働者の需要は留保しておくことができない性質のものではあるとしつつ、しかしながら、派遣元としては、労働者派遣業の上記特質を理解したうえ、派遣労働者確保のメリットと派遣労働者に対する需要の変動リスク回避などの観点を総合的に勘案して、派遣期間だけ労働契約を締結する形態ではなく、期間1年という期間を定める形で労働契約を締結したのであるから、その契約期間内については派遣先との労働者派遣契約の期間をそれに合わせるなどして派遣先を確保するのが務めであり、それによって労働契約中に派遣先がなくなるといった事態はこれを回避することができたとした。
そして、本件において、派遣先との間の労働者派遣契約が解約され、その当時、本件労働者らに対する新たな派遣先が見出せず、就業の機会を提供できなかったことについては、派遣元に帰責事由が認められるとし、賃金の仮払いを認めました。