【解雇事件マニュアル】Q38均等法による相談や援助及び調停の申請を理由とする解雇の禁止とは

1 セクシュアル・ハラスメントに関する雇用管理上の措置等(均等法11条)

(均等法11条)

事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

2 事業主は、労働者が前項の相談を行つたこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

3~5 略

 均等法11条1項は、使用者は、職場において行われる性的な言動(セクシュアル・ハラスメント)について、労働者から相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならないとしている。

 そして、同条2項は、使用者は、労働者が上記相談を行ったこと又は使用者による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないとしている。

 解雇が、使用者へのセクハラ相談等を契機として行われたと認められる場合には、原則として同項の禁止する解雇に当たるものと解され、違法・無効もしくは不法行為に該当し損害賠償の対象となり得る(『注釈労基労契法』204頁)。

2 マタニティ・ハラスメントに関する雇用管理上の措置等(均等法11条の3)

(均等法11条の3)

事業主は、職場において行われるその雇用する女性労働者に対する当該女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法第六十五条第一項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第二項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものに関する言動により当該女性労働者の就業環境が害されることのないよう、当該女性労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

2 第十一条第二項の規定は、労働者が前項の相談を行い、又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べた場合について準用する。

3~4 略

 均等法11条の3第1項は、職場において行われる女性労働者に対する妊娠又は出産に関する事由であって厚生労働省令で定めるものに関する言動により当該女性労働者の就業環境が害されることのないよう、当該女性労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならないとしている。厚生労働省令で定めるものとは、①妊娠したこと(均等則2条の3第1号)、②出産したこと(同条2号)、③均等法12条及び同法13条1項の健康確保措置を求めようとし、もしくは求め、または受けたこと(均等則2条の3第3号)、④労基法64条の2第1号、同法64条の3第1項及び女性労働基準規則2条2項の坑内労働・危険有害業務の就業制限を求めようとし、もしくは求め、または受けたこと(均等則2条の3第4号)、⑤労基法65条1項及び2項の産前産後休業を求めようとし、もしくは求め、または受けたこと(均等則2条の3第5号)、⑥労基法65条3項の軽易業務への転換を求めようとし、もしくは求め、または受けたこと(均等則2条の3第6号)、⑦労基法66条の就労制限を求めようとし、もしくは求め、または受けたこと(均等則2条の3第7号)、⑧労基法67条の育児時間を求めようとし、もしくは求め、または受けたこと(均等則2条の3第8号)、⑨妊娠又は出産に起因する症状により労務の提供ができないことや労働能率が低下したこと(同条9号)である。「労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針」(平18.10.11厚労告614号)第4の3⑴は、「妊娠又は出産に起因する症状」とは、つわり、妊娠悪阻、切迫流産、主産後の回復不全等、妊娠又は出産したことに起因して妊産婦に生じる症状をいうとしている。

 そして、均等法11条の3第2項は、同法11条2項を準用して、使用者は、労働者が上記相談を行ったこと又は使用者による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないとしている。

 同条項と同様、解雇が、労働者が上記相談を行ったこと又は使用者による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを契機として行われたと認められる場合には、原則として同法11条の3第2項の禁止する解雇に当たるものと解され、違法・無効もしくは不法行為に該当し損害賠償の対象となり得るだろう。

3 都道府県労働局長による紛争の解決の援助(均等法17条)

(均等法16条)

 第五条から第七条まで、第九条、第十一条第一項及び第二項(第十一条の三第二項において準用する場合を含む。)、第十一条の三第一項、第十二条並びに第十三条第一項に定める事項についての労働者と事業主との間の紛争については、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律(平成十三年法律第百十二号)第四条、第五条及び第十二条から第十九条までの規定は適用せず、次条から第二十七条までに定めるところによる。

(均等法17条)

 都道府県労働局長は、前条に規定する紛争に関し、当該紛争の当事者の双方又は一方からその解決につき援助を求められた場合には、当該紛争の当事者に対し、必要な助言、指導又は勧告をすることができる。

2 第十一条第二項の規定は、労働者が前項の援助を求めた場合について準用する。

 均等法17条1項は、同法16条が定める一定の事項についての労働者と使用者との間の紛争について、都道府県労働局長は、当該紛争の当事者からその解決につき援助を求められた場合には、等がお紛争の当事者に対し、必要な助言、指導又は勧告をすることができるとしている。

 そして、同法17条2項は、同法11条2項を準用し、使用者は、労働者が同法17条1項の援助を求めたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないとしている。

 同法11条2項と同様、解雇が、同法17条1項の援助を求めたことを契機として行われたと認められる場合には、原則として同条2項の禁止する解雇に当たるものと解され、違法・無効もしくは不法行為に該当し損害賠償の対象となり得るだろう。

4 紛争調整委員会による調停(均等法18条)

(均等法18条)

 都道府県労働局長は、第十六条に規定する紛争(労働者の募集及び採用についての紛争を除く。)について、当該紛争の当事者(以下「関係当事者」という。)の双方又は一方から調停の申請があつた場合において当該紛争の解決のために必要があると認めるときは、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第六条第一項の紛争調整委員会(以下「委員会」という。)に調停を行わせるものとする。 2 第十一条第二項の規定は、労働者が前項の申請をした場合について準用する。

 均等法18条は、同法16条が定める一定の事項についての労働者と使用者との間の紛争について、都道府県労働局長は、当該紛争の当事者から調停の申請があった場合において当該紛争の解決のために必要があると認められるときは、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律6条1項の紛争調整委員会に調停を行わせるとしている。

 そして、均等法18条2項は、同法11条2項を準用し、使用者は、労働者が同法18条1項の調停の申請をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないとしている。  同法11条2項と同様、解雇が、同法18条1項の調停の申請をしたことを契機として行われたと認められる場合には、原則として同条2項の禁止する解雇に当たるものと解され、違法・無効もしくは不法行為に該当し損害賠償の対象となり得るだろう。

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