【解雇事件マニュアル】Q48試用期間とは

 使用者が労働者を採用する際に、入社後1か月から6か月程度を試用期間とし、当該期間中に従業員としての適格性を観察して本採用するか否かを決定することがある。

 このような試用期間の性質について、三菱樹脂事件・最大判昭48.12.12労判189号16頁は、試用期間の性質をどう判断するかについては、就業規則の規定の文言のみならず、当該企業内において試用契約の下に雇用された者に対する処遇の実情、とくに本採用との関係における取扱いについての事実上の慣行の如何をも重視すべきであるとした。そして、同社では大卒の新卒採用者を試用期間終了後に本採用しなかった事例はないこと、雇入れについて別段契約書の作成をすることもなく、ただ本採用にあたり当人の氏名、職名、配属部署を記載した辞令を交付するにとどめていたこと等の過去における慣行的実態から、試用期間中も解約権留保付きの労働契約が成立しているとし、本採用拒否は留保された解約権の行使、すなわち解雇にあたるため、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当として是認できる場合にのみ許されるとした。

 このように、試用期間の定めがある場合も、当初から労働契約が成立しており、試用期間中は不適格性を理由とする解約権が留保されているという見解が一般的である。試用期間満了後の本採用拒否は、留保された解約権の行使、すなわち解雇にあたるため、解雇権濫用法理(労契法16条)などの解雇規制が適用される。

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