【解雇事件マニュアル】Q51本採用拒否の有効性の判断基準は
試用期間の性質は解約権留保付労働契約であり、試用期間後の本採用拒否は、留保された解約権の行使、すなわち解雇にあたるため、解雇権濫用法理(労契法16条)が適用され、客観的合理的理由及び社会通念上の相当性が必要である。
また、三菱樹脂事件・最大判昭48.12.12労判189号16頁は、試用期間による解約権留保の趣旨について、採用決定当初にはその者の資質、性格、能力その他管理職要員としての適格性の判断資料を十分に収集することができないため、後日の調査や観察に基づく最終決定権を留保する趣旨であるとし、留保解約権に基づく解雇は、通常の解雇の場合よりも広い範囲の自由が認められるが、上記の解約権留保の趣旨・目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し、社会通念上相当として是認され得る場合にのみ許されるとした。
さらに、同判決は、使用者が、採用決定後における調査の結果により、または試用中の勤務状態等により、当初知ることができず、また知ることが期待できないような事実を知るに至った場合において、そのような事実に照らしその者を引き続き雇用しておくのが適当でないと判断することが、上記解約留保の趣旨・目的に照らして、客観的に相当であると認められる場合に留保解約権の行使が是認され得るとした。
したがって、使用者が採用時に知っていた事実及び知ることが期待できた事実は本採用拒否の理由とはならず、本採用拒否の理由は、試用期間中の勤務状態等により初めて判明した事実でなければならない。