【解雇事件マニュアル】Q80就業規則上の懲戒解雇事由により普通解雇することができるか

 就業規則上の解雇事由が限定列挙である場合に、懲戒解雇事由として列挙されている事由によって労働者を普通解雇することはできるのであろうか。

 菅野ら『労働法』768頁は、就業規則上の解雇事由について限定列挙説を採用した上、列挙された懲戒解雇事由に該当する場合に、より軽い普通解雇を行うことは、契約解釈上当然に許されるべきことであるとしている。

 しかし、普通解雇と懲戒解雇は、その根拠や性質が全く異なるものである。また、就業規則上の解雇事由が限定列挙であるか例示列挙であるかを契約の解釈の問題であると考えたとき、就業規則上の普通解雇事由が限定列挙と解されるのは、使用者が意図的に普通解雇事由を列挙されたものに限定した場合である。その場合に、使用者が普通解雇事由と懲戒解雇事由を別々に定めた趣旨は、普通解雇事由に該当する場合には普通解雇をし、懲戒解雇事由に該当する場合には懲戒解雇をすることにあると考えることが合理的であるように思われる。

 なお、実際には普通解雇事由に「懲戒解雇事由に該当する場合」などと記載されている場合も多く、その場合には当然に懲戒解雇事由も普通解雇事由に該当することになる。

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