【解雇事件マニュアル】Q93 就業規則に懲戒事由等を追加することは許されるか

(労契法10条)

 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。

 就業規則に、これまで懲戒の対象とされていなかった新たな懲戒事由を追加することは許されるか。

 就業規則に新たな懲戒事由を追加することも可能であるが、就業規則に懲戒事由を追加することは、就業規則の不利益変更に当たるため、労契法10条の要件に従ってその有効性が判断される。これまで就業規則はあったが懲戒の定めがなかったところ、新たに懲戒規定を定める場合も同様である。

1 周知性

 まず、変更後の就業規則が労働者に周知されていることが必要である(周知性)。同条の周知性は労契法7条の周知性と同義であるとされているが(水町『詳解労働法第4版』227頁参照)、学説の中には、就業規則による労働条件の変更(労契法10条)については、労働条件変更に対する労働者の関与の保障等の観点から、就業規則の契約内容効(労契法7条)の場合の「周知」より厳格に解すべきとすべきものや、労基法106条・労基則52条の2所定の方法に準じて、十分な周知措置をとることが求められるとするもの(『新コンメ』390頁)、就業規則が変更されること及びその変更の具体的な内容について事業場の労働者全員に対して適切かつ的確に説明する必要があるとするもの(川口『労働法』114頁)がある。

 大阪市教委(高校管理作業員・懲戒免職)事件・大阪地判平21.7.1労判992号23頁は、公務員の懲戒処分の量定を定める指針に関する事案であるが、飲酒運転を厳罰化する指針の改定について、指針が日常の職務の中で文書に親しむことが比較的少ない現場の職員に対して周知されたといえるためには、文書を直接交付し、口頭で直接、懲戒処分、特に免職に至るまでの懲戒事由に関する指針が記載された重要な文書であることを告げる等、個々の職員の注意を引くような方法でその周知がなされなければならず、掲示板への掲示やレターケースへの配布では周知がなされていたとはいえないとした。

2 合理性

 次に、就業規則の変更が合理的なものであることが必要である(合理性)。労契法10条は、就業規則の変更が合理的か否かは、①労働者の受ける不利益の程度、②労働条件の変更の必要性、③変更後の就業規則の内容の相当性、④労働組合等との交渉の状況、⑤その他の就業規則の変更に係る事情に照らして判断するとしている。

 労契法10条は、合理性判断をめぐる判例の内容を条文化したものであるところ(水町『詳解労働法第4版』229頁)、第四銀行事件・最二小判平9.2.28労判710号12頁は、上記の他にa代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況、b他の労働組合又は他の従業員の対応、c同種事項に関する我が国社会における一般的状況を考慮要素として挙げており、これらの要素も上記③ないし⑤の中で検討すべきである(水町『詳解労働法第4版』229頁は、acは③、bは④で考慮すべきとしている。)。

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