今日の労働裁判例
Case139 課長経験者の受付業務への配転が、労働者の人格権を侵害し労働者を退職に追いやる意図でなされたものであり人事裁量を逸脱した不法行為に当たるとした事案・バンク・オブ・アメリカ・イリノイ事件・東京地判平7.12.4労判685.17
(事案の概要) 被告銀行は、赤字基調にあったことから、新経営方針を徹底させるため、方針に積極的に協力する者を昇格させ、積極的でない原告労働者を含む多数の管理職を降格する人事を行いました。 これに伴い、勤続33年でコマ […]
Case138 職種を特定されて雇用されたが就業規則上職種変更が予定されていた労働者の復職可否の判断にあたり従前の業務の他に配置可能な部署ないし担当可能な業務の検討をすべきであるとした事案・カントラ事件・大阪高判平14.6.19労判839.47
(事案の概要) 原告労働者は、運転者として職種を特定され、被告会社において大型貨物自動車運転手として勤務していました。もっとも、被告の就業規則では業務の都合により職種の変更もあるとされていました。 原告は、慢性腎不全の […]
Case137 懲戒解雇の場合の退職金不支給条項につき全額不支給及び一部不支給が有効となる場合を制限した事案・小田急電鉄(退職金請求)事件・東京高判平15.12.11労判867.5【百選10版34】
(事案の概要) 原告労働者は、過去に2度、電車内での痴漢行為により罰金刑に処せられ、2度目は被告会社から昇給停止及び降職処分を受け始末書を提出していました。 原告が再び電車内での痴漢行為により執行猶予付きの懲役刑に処 […]
Case136 配転と賃金は別個の問題であり、使用者には低額な賃金が相当な職種へ配転した場合でも賃金は従前のままとすべき契約上の義務があるとした事案・ デイエフアイ西友(ウェルセーブ)事件・東京地決平9.1.24労判719.87
(事案の概要) 労働者が減額された賃金仮払いを求めた仮処分の事案です。 本件労働者は、本件会社社長のスペシャル・アシスタントとして年額給与約784万円で雇用されていました。本件労働者は、会社と合意のうえ商品部に異動し […]
Case135 自律神経失調症により復職当初は従前通り勤務できないとしても、負担軽減措置や配置転換も可能であったとして休職期間満了による退職扱いを無効とし慰謝料も認めた事案・キヤノンソフト情報システム事件・大阪地判平20.1.25労判960.49
(事案の概要) 原告労働者は、職種限定なく被告会社に雇用されコンピュータプログラマーとして勤務していましたが、クッシング症候群及び自律神経失調症により2年間の休職に入りました。 原告は、休職期間満了前に復職可能の診断 […]
Case134 適正な賃金の額を支払うための調整的相殺は、時期、方法、金額等から労働者の経済生活の安定との関係上不当でなければ労基法24条1項の全額払い原則に反しないとした最高裁判例・福島県教組事件・最判昭44.12.18労判103.17【百選10版31】
(事案の概要) 原告労働者ら146名は、組合運動のため欠勤しましたが、被告福島県は欠勤控除をせずに原告らに給与を支払いました。 福島県は、欠勤から4か月後になって初めて原告らに対して欠勤分の給与が過払いであるとして返 […]
Case133 労働者の同意に基づき新規則上の資格制度を適用するために行う新規則における格付けは労働者の同意の趣旨に著しく反するものであってはならないとした事案・イセキ開発工機(賃金減額)事件・東京地判平15.12.12労判869.35
(事案の概要) 原告労働者(女性)は、旧就業規則上の資格制度(二級、一級、主事補、主事、参事、参与、理事)において「主事」に格付けされ、月額給与は約35万円でした。なお、資格に対応する資格給の金額は規則に明記されていま […]
Case132 脳内出血で歩行困難等の後遺症が生じた車両技術者につき工具室での就業が可能であったとして休職期間満了による退職扱いを無効とした事案・東海旅客鉄道(退職)事件・大阪地判平11.10.4労判771.25
(事案の概要) 被告会社と職種限定のない雇用契約を締結し、車両技術業務等に従事していた原告労働者は脳内出血で倒れ病気休職しました。3年の休職期間満了前に、原告は会社に対して復職の意思表示をしましたが、会社は、原告に歩行 […]
Case131 職務発明に対する「相当な対価」の額をあらかじめ確定的に定めることはできないとした最高裁判例・オリンパス光学工業事件・最判平15.4.22労判846.5【百選10版30】
(事案の概要) 原告労働者は、被告会社の研究開発部に所属しビデオディスク装置の研究開発に従事し、「ピックアップ装置」という特許法35条1項の職務発明に当たる本件発明をしました。 会社では、社内規則において、従業員の特許を […]
Case130 高次脳機能障害により精神的能力が4,5歳の程度となった労働者が提出した退職届が意思無能力により無効とされた事案・農林漁業金融公庫事件・東京地判平18.2.6労判911.5
(事案の概要) 原告労働者は、自宅で心肺停止し、低酸素脳症により、高次脳機能障害の後遺症が残り、精神的能力が4歳ないしは5歳の程度に固定されていました。 原告は、この状態で退職届に署名し、被告法人に提出しました。 本件は […]