Case2 スタッフ職の管理監督者性が否定された事案・三井住友トラスト・アセットマネジメント事件・東京高判令4.3.2労判1294.61

(事案の概要)

 部下や組織のマネジメントを行う所謂ライン管理職ではなく、部下を持たずに専門的な知識や経験を活かして特定の業務を担当するスタッフ職の管理監督者性が問題となった残業代請求の事案です。

 社内パソコンのログオン・ログオフ記録から、所定労働時間外の労働時間を主張しました。

(判決の要旨)

第1審判決(東京地判令3.2.17労判1248.42)

1 管理監督者性

 判決は、スタッフ職の管理監督者性を判断する場合にも、ライン管理職の場合と同様「当該労働者が実質的に経営者と一体的な立場にあるといえるだけの重要な職責と責任、権限を付与されているか」という観点が重要な判断要素になるとしました。

 そのうえで、「原告は、自己の労働時間について一定の裁量があり、管理監督者に相応しい待遇がなされているものの、実質的に経営者と一体的な立場にあるといえるだけの重要な職責と責任、権限を付与されているとは認められない」として、管理監督者性を否定し、会社に残業代の支払いを命じました。

2 実労働時間

 本件の事情の下では、所定労働時間内の在社時間については、たとえ自己研鑽等の作業であっても、被告の指揮命令下にあったものと推認することができ、労働時間に当たるとしました。また、終業時刻後の残業を認めました。

 一方、原告が早朝出勤してマーケット情報の収集やコメントチェックを行っていた時間について、所定始業時刻前のパソコンのログ記録をもって始業時刻と主張する場合には、「使用者から義務付けられまたはこれを余儀なくされ、使用者の指揮命令下にある労働時間に該当することについての具体的な主張立証が必要」としたうえ、上記時間は労働時間に当たらないとしました。

3  付加金

 一審判決は、割増賃金と同額の付加金を認めました。

控訴審判決

 高裁は、原告の早朝出勤について、会社がこれを認識または把握しながら、明示的に問題視することなく、むしろ容認するかのような態度をとっていたこと、および注意・指導にもかかわらず始業時刻前の出社が継続されたことに対し、さらなる注意・指導を行わなかったことからすると、会社による黙示的な容認の下、業務として行っていたものと認められるとして、上記時間も労働時間に当たるとしました。

※確定

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