Case28 コロナによる業務縮小を理由とするバス運転手の整理解雇が無効とされた事案・森山(仮処分)事件・福岡地決令3.3.9労判1244.31
(事案の概要)
コロナ禍での業務縮小を理由としたバス運転手の整理解雇の有効性が争われた事案です。
会社は、主として貸切バス事業を営んでいましたが、新型コロナウイルス感染拡大により、令和2年2月中旬以降貸切バスの運行事業ができなくなっていました。
会社は、令和2年7月に福岡・大阪間の高速バス事業を開始しましたが、それに先立つ同年3月、全従業員が参加するミーティングにおいて、今後福岡・大阪間の高速バスを毎日走らせる予定であることを説明し、高速バスの運転手として稼働してもよい者は挙手するよう促しましたが、原告を含む数名は挙手しませんでした。
そうしたところ、その3日後、挙手をしなかったことを理由に原告を含む2名の運転手が解雇予告されました。会社は、令和2年7月に、高速バスの運転手2名を新たに雇用していました。
(判決の要旨)
判決は、解雇を無効と判断しました。
判決は、貸切バスの運行事業ができなくなっていることなどから、人員削減の必要性があったことは一応認められるとしながら、人員削減の規模や人選基準等を説明せず、希望退職者を募ることも、解雇対象者から意見聴取を行うこともなく直ちに解雇予告をしたことについて、拙速といわざるを得ず、本件解雇の手続は相当性を欠くとしました。
また、乗務の必要性を十分に説明しないまま、ミーティングの場で挙手をしなかったことをもって直ちに高速バスの運転手として稼働する意思は一切ないと即断し、解雇の対象とするのは人選の方法として合理的ではないとしました。