Case38 精神障害の増悪について「特別な出来事」が必要とする労災認定基準に縛られないとした事案・国・三田労基署長(日本電気)事件・東京高判令2.10.21労判1243.64

(事案の概要)

 精神障害による自殺の事案で、労災不支給決定に対する取消訴訟です。

 被災者は、メセナ(芸術文化支援)エキスパートとして社会貢献支援活動関係の企画・運営、広報活動等の業務を行っていましたが、平成20年4月に着任した上司との方針の対立が生じてから徐々に体調を崩し、平成21年2月初旬に抑うつ神経症等と診断されました。

 その後、顧客からのクレーム、業務の変更、上司からの大声での叱責等の出来事を経て、平成21年7月下旬に自殺しました。

 原告(被災者の妻)は、上記出来事を経て平成21年5月下旬に被災者が精神障害を発症したと主張していました。

(判決の要旨)

 一審判決は、平成21年1月中旬頃を精神障害の発症日と認定したうえ、発症後の出来事は考慮せず、請求を棄却しました。

 控訴審判決は、一審同様平成21年1月中旬頃を精神障害の発症日と認定しましたが、業務起因性の判断は、被災者のその後の精神状態の推移を踏まえて行う必要があるとしました。

 そして、被災者が軽度のうつ病を発症させ、治療によりいったんは症状が寛解したのち、発症後の出来事により、平成21年5月以降に再びその症状を悪化させ、自殺するに至ったとして、個別の心理的負荷としては「中」の出来事は、相互に関連して生じており、全体を一つの出来事として評価すると、心理的負荷は「強」に該当するとし、業務起因性を認めました。

 精神障害の労災認定基準は、発症後の増悪については「特別な出来事」があり、その後おおむね6か月以内に対象疾病が自然経過を超えて著しく悪化した場合に限り業務起因性を認めるとしていますが、裁判所は必ずしもこれにとらわれないとしました。

※確定

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