Case61 遅刻を理由とする出勤停止処分が無効とされた事案・不二タクシー事件・東京地判令3.3.26労判1254.75

(事案の概要)

 タクシー運転手である原告労働者は、13回にわたって遅刻をしたとして、出勤停止14日の懲戒処分を受けました。本件は、原告が、本件懲戒処分の無効の確認及び、出勤停止期間の賃金等の支払を求めた事案です。

 また、有給休暇を取得した日について、労基法39条を下回る手当しか払われていなかったため、原告はその差額賃金も請求しました。

(判決の要旨)

1 懲戒処分

 判決は、原告の遅刻が常態化していたとしながら、懲戒事由として重大であるとまではいえず、これまで原告に対する懲戒処分がなされたことがなく、長い間始末書の提出や個別の指導もなされていなかったこと等から、出勤停止14日という降職に次ぐ重さの懲戒処分をするうえでは、少なくとも事前の警告が必要であったとしました。

 また、懲戒処分にあたり原告の言い分を聴く手続が何らとられておらず、手続の相当性を欠くとしました。

 以上より、判決は、本件懲戒処分は社会通念上相当であったとはいえず、懲戒権の濫用に当たり無効であるとし、出勤停止期間の賃金の支払を命じました。

 本件懲戒処分の無効確認の訴えは、確認の利益を欠くとして却下されました。

2 年休手当

 判決は、労基法39条は強行法規であり、使用者は、有給休暇について労基法39条の算定方法による手当を支払わなければならないとして、実際に支払われた手当との差額の支払いを認めました。

※控訴

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