Case71 上司のセクハラ・パワハラについて、会社の使用者責任及び事後対応についての安全配慮義務違反が認められた事案・人材派遣業A社ほか事件・札幌地判令3.6.23労判1256.22

(事案の概要)

 被告会社の支店長である原告(女性)の直属の上司であった被告専務取締役(男性)は、営業社員の研修後の飲み会の二次会で、原告に対して「ホテルに遊びに行っていいか」「抱いちゃおうかな」などと発言し、二次会終了後、LINEで原告に対して「ホテルに遊びに行きたいのです」などとメッセージを送り、架電しました。また、被告専務取締役は、別の日の飲み会の二次会で、テーブルの下で原告の手を握ったり、更に別の日のカラオケ店での二次会で原告に抱きつき、キスをしたり、胸を触ったりしました。

 原告は、被告専務取締役から受けたセクハラについて、部下や副社長に相談しました。

 原告の部下は、被告専務取締役に対して、原告が被告専務取締役からセクハラを受けたと言っているので気を付けたほうがよいと伝えました。

 その後、被告専務取締役は、原告に対して、支店長としての資質を疑うかのような叱責を繰り返したり、他の従業員や社長の前で原告を批判するなどするようになりました。

 原告は、総務部長に相談しましたが、被告会社による特段の対応がなされなかったことから、総務部長や副社長に対して退職の意向を示すようになりました。

 被告会社は、原告の部下や被告専務取締役からの聞き取り調査等を行いましたが、被告専務取締役がセクハラ・パワハラを強く否定したため、LINEメッセージだけではセクハラ・パワハラの事実は認定できないと結論付け、被告専務取締役に対して一応の処分はしたものの、被告専務取締役が原告の支店をみるという組織体系を変えませんでした。

 原告は、被告会社の慰留によりその後休職に入りましたが、被告会社は、原告を支店長から係長に降格する旨を伝えました。

 本件は、原告が被告専務取締役に対してセクハラ・パワハラの慰謝料等を求めるとともに、被告会社に対して使用者責任やハラスメントに対応する義務違反に基づく慰謝料及び休職期間中の賃金を求めた事案です。

(判決の要旨)

 判決は、被告専務取締役の上記セクハラ行為が不法行為に該当するとしました。

 また、被告専務取締役が、原告がセクハラを訴えていることを知り、原告に対して直属の上司としての立場を利用したハラスメントをしたとして、これも不法行為に該当するとしました。

 そして、本件会社も、上記被告専務取締役の不法行為につき使用者責任を負うとしました。

 さらに、被告専務取締役のLINEメッセージから少なくともセクハラ行為があったことは容易に認識し得たにもかかわらず、被告会社が原告主張のハラスメントを認定できないと安易に判断して、組織体系を変更せず、原告に対して係長職を打診した事後対応について職場配慮義務に違反するとしました。

 以上より、被告会社及び被告専務取締役に対して、慰謝料150万円等の支払を明じました。

 休業期間中の賃金についても一部認めました。

※控訴後取下げ

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